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狭間06エピソード集
私立探偵部の日常

エピソード『ひっかけ』




目次





エピソード『ひっかけ』


登場人物



佐藤火星
私立探偵部員。

カウラアード・シルフィ・ルートスペード
私立探偵部の先輩。魔法的な物には詳しい。

三城岳閑
仲良し(?)三人組の一人。

佐和山伊織
仲良し(?)三人組の一人で射撃部部長。体育会系過ぎて新入部員がほとんど消えた。

御所ヶ谷沙良
仲良し(?)三人組の一人。

秋葉山小鉄
射撃部の新入部員。


土の下に



火星
(高く飛ぶ鳥の影を見上げ、やや肌寒い空気を胸いっぱいに吸い込み、残っていた眠気を飛ばす)



[utako] #土曜の朝。依頼をこなしに休日登校して冬期の野菜や花を始末していた。



火星
(使える廃棄物は堆肥化容器に運び、次の時期の肥しに。手っ取り早く片付けるためにも、先に細々としたゴミを回収しておく)



[utako] #土いじりの何が楽しいのかとトレーニング中の生徒に見られるが、本当に楽しそうに土を掘り返しては小石や枝を取っていた。



男子生徒
「げっ、おわっ―――!?」



[utako] #火星のいる畑からすぐ近く、ランニング中の男子生徒が転んだ。中学2年生でも然程変わらないが、新1年生のようだった。



男子生徒
「いってぇ……」

男子生徒
「大丈夫か? また、ここで転んでやんの」



[utako] #転んだ方は若干不機嫌そうな顔をしたが気にする事なく、そのまま立ち上がり、何事もなかったようにランニングに戻っていく。



火星
(「大丈夫?」と声をかけようと立ち上がって、タイミングを逃して突っ立ったまま、微妙な気分になりつつ……男子生徒が転んだところを均しに歩いていく)

火星
「部活っぽくて良いなぁ、あぁいうの」



[utako] #基本的に単独プレーの私立部ではあまりない光景で、少し羨ましくなった。



火星
「さって、石でも埋まってるのかな……」



[utako] #手で擦るのは避け靴底でざりざりと地面を擦ると、案の定、石が埋まっていたものの……
[utako] #人が躓きそうな程に大きくはなく、地面からそれほど出っ張ってるわけでもなかった。



火星
「……一応、取っておこうかな」



[utako] #スコップで二、三度つつくように掘ってやると摘まんで持てる程度の小石がぽろりと出てきた。



火星
「?」



[utako] #石の表面に何かが書かれてるような気がして指で擦ると、ぱかりと割れ、地面に落ちる前に砂になってしまう。



火星
「あらら……」



[utako] #何かの土材が埋まっていたのかな、と深く考えずにぽっかり空いた小さな穴に砂を詰めて作業に戻った。

ひっかけ


[utako] #数日後、校内の不思議な噂の一つとして『ひっかけ』という単語が流れ始める。
[utako] #現象は単純で人が転ぶ。その手の妖怪の話は全国にあるが、今時古いオカルト話を持ち出す生徒は少なく、教頭は実はヅラ! 程度の自校内の面白話のネタにされていた。
[utako] #当然、そんな噂話を聞いてミーハー入ってる火星は『僕も見ましたよ!』(フンスフンス)と興奮している。



カウラ
「クラスから2人ずつ、ローマ字表記のアルファベット順で生徒が消えていくのならまだしも……人を転ばす程度、魑魅魍魎も良い所じゃない。第一、そんな下級の妖怪がこの学校にはびこってたら、今頃誰かに縊られるか校外にポイされてるわよ」

火星
「で、でも、ほら! 1年教室東棟階段とか部室棟3Fの南側の廊下に、私立探偵部の前の廊下だってひっかけがいるっていう話ですよ!」

カウラ
「ここの前にも? ……」(新学期に入った頃にワックスの塗り残しで何度か滑って転んだのを思い出し、重大な事を考えている様な顔で誤魔化す)

火星
「い、いたんですか!?」

カウラ
「え? ……えぇ、居た様な、居なかった様な……」

火星
「やっぱりぃ……、うぅ、転んで手をついて腕壊したらどうしよ……」

カウラ
「よく言うわね……トーナメント部で貴女の事を転ばせようとした兵をそのまま踏み倒しての、私観てたわよ」

火星
「居ましたっけ……、そんな人」

カウラ
「……第一、腕が脆くても、貴女なら転んだ拍子に硬化すれば問題ないでしょ。床が多少傷ついても、転んだ拍子の事故って事で平気よ」

火星
「あ……そうでした。」

カウラ
(全く、とため息をついて)「実害の程はどれくらいなのかしら?」

火星
「えっと……、噂の中だと、校内練習してた陸上部が脚を折ったとか、生徒が手をついて挫いたとか、転んだ拍子にその、傘が……ぶすって目にささったとか、さ、流石にそれは嘘だと思うんですけど……」

カウラ
「アナザーだったら死んでるわね。きっと。……噂の十分の一でも害が出ているなら、その内依頼が来るでしょうけれど、貴女は注意しておきなさいよ。転んだ拍子に硬化しても、転んだ先に人が居ないとは限らないのだから」

火星
「……はい。解ってます」(手を合わせて、こくんと頷く

カウラ
「ただの噂なら、山を過ぎればなくなるでしょうし……今はそこまで気にする事はないわよ」



[utako] #依頼が来なければ、と言葉を残して緑茶を啜る。



火星
(一抹の不安は残るものの、所謂七不思議というものに興味はあり、真偽に関係なく、ひっそりと胸を躍らせていた)


ウル中、第二理科準備室



SE
がらら

伊織
「ちぃーッス」

沙良
「おや……、この忙しい時期に」



[utako] #赤と青の煌く煙が部屋中を漂い、紅茶に混じって紫色に輝くカップを持った沙良と、2匹の小人に宿題させている閑がいた。



伊織
「……あんたらちょっと自重しろっつの」

「自重って……、表立って軍隊訓練みたいな事してるのもどうかと思いますよ」

伊織
「何だ、観てたの?」

沙良
「園芸部の畑の件は僕も知っているからね。あそこは僕も間借りさせてもらっているから」

伊織
「……どこまで、知っているのやら」(椅子に座って、部屋の外に視線を向け、軽く手を振る。



[utako] #3人以外の人間が居る、と言う事を暗に告げると小人が消え、渦巻いていた煙はフラスコの中へと戻り、カップの輝きはなくなる。



伊織
「入って来な、小鉄」

小鉄
「1年1組、秋葉山小鉄! 失礼しまッス!」



[utako] #敬礼しながら入ってきた



沙良
「また元気な1年生を見つけたね」

「凄い頭ですね……」

小鉄
「あざッス!」

伊織
「知ってると思うけど……うちの残った新人。よろしく頼むネ。小鉄、楽にして座りな。普通にして良いよ」

小鉄
(上級生3:下級生1の状態に緊張しつつも、席に座る)「うッス!」

沙良
「で、紹介しに来たのは新人の自慢かい? それとも『ひっかけ』の件かい?」

伊織
「両方。自慢は後に回して、先に『ひっかけ』の方」

「……最近は保健室を使う生徒も出てきてますね。私も一度、ポイントで転びました。確か……射撃部がトレーニングしている近くにも、ポイントありましたよね」

伊織
「ポイントって……転び易い場所、で良いじゃん。まー……呼び方は好きにすればイイけどさ」

沙良
「部活の支障に?」

伊織
「なりまくり……、って言っても、他の部活がそんなに気にしてないようだったから不思議に思ってたらさー……なーんか、転んだ事自体を忘れてるっつーか? 気にしてなさ過ぎでチョーおかしいわけ」

「私は躓いただけかなっていう程度でしたけど」

伊織
「大半はそーでしょ。躓いてもそんなに気にしない。でも、注意してるのに何度も同じところで躓くのは変じゃん。……言葉パクって嫌だけど、本当にポイントってヤツ……」

沙良
「人除けの様な、意識を逸らす類なら一般の生徒は噂はしても問題にまではしない、と思っているのかな?」

伊織
「もろちん。去年にも同じよーな事があったから、気にしすぎかもしんないけど……研修と交流を兼ねて、コイツに行かせてみよーかな、ってね」



[utako] #くいっと小鉄を指差し



「あ、私ノータッチで」

沙良
「同じく」

伊織
「え!?」

「1.面白そうですけど、私も今年は校外活動でマラソンとか出ますし……射撃部と違って新入部員は多いですから」

沙良
「2.面白そうだけど、得しないよね僕は。寧ろマスターに内緒で事を進める事でもないし、僕はどちらかといえば、あっち側だよ。わざわざ言う事でもないから黙ってるけどね」

伊織
「うわー、もー萎えっ萎えーあんたらから面白い話でも出てくるかと思ったのにー、クソインテリオタ供めー、魔術なんて科学に淘汰されりゃイイのに」

沙良
「その暴言は聞かなかった事にするよ。進言としては、あそこは個性が強いからね。交流するなら目立つか潜むか、どっちかだろうね。」

「調べ物があったらパフェ1で受けますから、頑張ってください」

伊織
「ヘーイ、ヘイ……じゃ、具体的に内容詰めていこーか」

小鉄
「よ、よろしくお願いしまッス!」


時系列


2013年4月

解説


何もない所で足を引っ掛ける事例の発生。解決に乗り出す探偵部。

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とにかく、元気いっぱい!ぶらりんぱわーではぴはぴ! 常識的な子は少ないけど、それでもあまり修正しないところがはぴはぴ!Paとジト目担はこちらです
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