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狭間06エピソード集

エピソード『遅いお彼岸』




目次





エピソード『遅いお彼岸』


登場人物



無戸室近衛

無戸室邸の主

無戸室香苗

無戸室近衛の叔母


本文



[utako] #10月某日。無戸室邸
[utako] #晴れ時々雨な日和に珍しい客がやってきた。



香苗

「本当にでかい所を買ったもんだね……」



[utako] #いつもの軽装とは違って、旅行鞄に日傘、あまり着慣れていない上等な着物を着た叔母の姿。



近衛

「ぱっと見りゃ良いだろ。さぁ山奥に帰れ」



[utako] #塩を撒く



香苗

「たまに会いに来てみれば……、この子は大人げないねぇ」



[utako] #笑いながら鞄と日傘を持たせて両手を塞いだ上で、額を鷲掴みにして持ち上げる。



近衛

「―――んっがぁ!? 大人げねぇのはどっちだ!!」



[utako] #みしみしと頭蓋の軋む音が聞こえたところですぐに下ろし



香苗

「客間ぐらいはあるんだろう? しばらくは京都に用があるから少しの間拠点にさせな」

近衛

「いてぇ……、そりゃ別に構わねぇが此処から行くよりはホテルをとりゃ良いじゃねぇかい」

香苗

「吹利にもそれなりに用事があるという事さね。京都の用事にはお前もおいで、そろそろ寺に顔を出しても良い頃だよ」

近衛

「……、色々と忙しい。今年も俺はいいさ」

香苗

「何の為の創造物(こどもたち)と嫁さんだい。良いからおいで」

近衛

(悩む様な、苦い様な顔をしてから……)「……考えとくさな」

香苗

「ほいほい」

近衛

「それで、その格好は? どうにも良い物を着てるなんて珍しいじゃねぇかい」

香苗

「来る時に別の所へ挨拶してきたんだよ。それに、これぐらいは寺に着て行く分と比べれば安い物さね」

近衛

「そりゃお疲れ様で。……待て、俺も良いもん着て行かねぇといけねぇわけか?」

香苗

「当たり前だよ。手配してやろうかい?」

近衛

「……親にイイモンを買って貰う歳でもねぇさな。今後必要になってくるんなら準備しとくさな」

香苗

「ほっほぉ」(火のついていないタバコを咥えて、ニヤニヤと笑い

近衛

「……無性に腹が立つな」

香苗

「まだまだ青い証拠だよ。(人が乗れる程の黒い犬を袖から出して、上に座り) さ。案内しな。歳は食えても歳には勝てんのよ」

近衛

「ついに足に来始めたか。まぁ良いじゃねぇかい。婆さんになるにも良い頃さな」

香苗

「あん? そりゃ……、ちょっと近衛。待ちな。ほら、追いかけろ黒犬。ケツに噛み付いてやれ」

近衛

「言うからその嗾け方は止めろぉ!!」



[utako] #数秒して、ガブッ、アッー! と無戸室邸に悲鳴が響いた。


時系列


2013年秋

解説


いい加減に墓参りへ行けと急かされる。

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