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目次


 

登場人物


緋昏歩(ひぐれ・あるく)
モノノケ商店街で『アネモネラウンジ』という喫茶店を営む女性。店の営業の合間に怪異を探し、記録する『記録屋』。
千房
オレっ娘茶髪女子中学生。

本文


[arca] ---

[arca] #夕暮れ時の神社。
[arca] #縁日が開かれ、屋台が並びいつもよりも賑やかな人通り。

    歩:「へえ、こんな所に縁日をやる神社があったのね。」

[arca] #街並の普段とは違う様子に心動かす。

    歩:「…(ちらほら、人間じゃないのも混じってるみたいね。」

[arca] #辺りの些細な気配を感じつつ祭囃子と人の流れに身を任せてみる。

    歩:「…(祭りごとになると、やっぱり人間以外もはしゃぐのね。」

[arca] #屋台でりんご飴を買い、散策を続ける。

    歩:「あ…このりんご飴、ちゃんと紅玉を使ってるわね。」
    歩:「甘酸っぱくておいし。」

[arca] #唇についた飴の欠片をペロリと舐めとり。

    歩:「こんなに陽気なら、ネタもたくさん見つかりそうね。あの木陰あたりに張ってみようかな。」

[arca] #屋台と屋台の間に立つ柳の木に寄りかかり、祭りの往来を眺め始めた。

    右の屋台のオヤジ:「らっしゃいらっしゃい!おいしいたこ焼きだよ!」
    歩:「わ…威勢が良いなぁ。」

[arca] #クルクルとリズミカルにたこ焼きを焼き上げている。熟練された業だ。

    千房:「おっちゃん、たこ焼きひとつ!」

[kurov] #まだ手に焼き蕎麦やらわたあめやらりんごあめやらチョコバナナやらもったままの茶髪女子中学生。

    右の屋台のオヤジ:「おう!今焼きたてできるから待ってな!」

[arca] #舟形のパックに焼きたてが詰められていく。

    歩:「…(あのお客さん、ずいぶん沢山持ってるわね。それも食べ物ばかり…。」
    右の屋台のオヤジ:「はいお待ちどうさん!アッツアツだからきをつけなよ。」
    千房:「さんきゅ、ええと……。」(財布をもどかしそうに取り出し)
    千房:「げ。」

[kurov] #がま口を覗き込んで動きを止める。

    千房:「あ、ええと……そのー。ごめん、おっちゃん……お金たんねーや……。」

[kurov] #しょんぼり。

    右の屋台のオヤジ:「ん?なぁ〜にぃ〜?姉ちゃん、やっちまったな!」
    歩:「…(お金が足りなかったみたいね。…なんかかわいそう。」

[arca] #少し考えて、柳の木陰から出ていく。

    歩:「おやじさん。そのたこ焼き、私が立て替えておくわ。」(オヤジにお金を渡す
    千房:「え。」
    右の屋台のオヤジ:「そうかい?まいだーり!」
    千房:「いやいやいや!いいって!見ず知らずの人にそんなことして貰うわけにいかねえよ。」
    千房:「あっ、ちょっ、おっちゃん、だめだって。」
    歩:「良いのよ、折角できたてなんだからもったないわ。」
    千房:「つったって……。」
    千房:(たこ焼き手におっちゃんと歩の顔を交互に)「しょうがねえ、人の好意は素直に受けとくか。ありがと、知らない姉ちゃん!今度、ちゃんと返すよ。」
    歩:「気にしないで。私しばらくそこに居るから、気が向いたら返しにきてね。」
    千房:「しばらくったって……いったん帰んなきゃ金ないよ。……姉ちゃん、一人できたん?」
    歩:「うふふ、それもそうね。ええ、たまたま通りかかったから様子を見てるの。」
    左の屋台のアニキ:「イカ焼き、イカ焼きダヨ。本物ダヨ、まじりっ気なしダヨ。」
    千房:「そっか。よかったらさ、一緒にくわね?」(たこ焼き指し出し)
    千房:「そろそろ落ち着こうかと思ってたんだ、俺も。」
    歩:「そうね…じゃあいただこっかな。」(微笑み
    千房:「さっきよさそうなとこ見っけたんだ、あっちの方。」(とおりから少し離れた社を指差し)
    歩:「ほんと?ぬけめないいのね。」
    右の屋台のオヤジ:「おう!となりのイカ焼きの、その怪しい呼び込みやめてくれねえか?こっちの客まで逃げちまう!」
    左の屋台のアニキ:「ソンナコトナイヨ、まじりっ気なしダヨ。」

[arca] #背景では屋台同士のコミュニケーション。

    千房:「その言い方なんか引っかかんな……実はこういう縁日って初めてでさ。」
    歩:「そうなの?なんか…歴戦の勇士って感じがしたんだけど。」(数々の戦利品をみつつ
    千房:「歴戦の勇士がこんなに浮き足立っていっぱい買うかよ。」(笑う)
    歩:「そう言えばそうね。」(微笑み
    歩:「あなたも一人?どこかに友達が居るの?」
    千房:「ん、今日は一人。誘ったんだけどたまたま都合悪いらしくてさ。」
    歩:「そうなんだ。もし友達が居るなら悪い気がしたけど。それなら安心ね。」
    千房:「ここここ、この裏によさそうな縁側があんだよね。」(喧騒から少しはなれた林の中、小さな社。狐の石像が鎮座している
    歩:「ほんと、静かで良い感じ。」
    歩:「…(お稲荷様かな?けっこう立派な象ね。」
    千房:「よっと。」(社裏手にちょうどよく座れそうな縁側じみた休憩・プレイスがあり、そこに座った)
    歩:(隣に腰掛ける

[kurov] #木々の隙間から夜の街が見える。縁日の音もうるさくない程度に聞こえる。

    歩:「ん〜、風情有るわー。」
    歩:「そう言えば、自己紹介がまだだったわね。私、緋昏歩って言うの。」
    千房:(がさごそとビニールからたこ焼きを取り出し、次いで焼きそば、お好み焼き等々縁側に広げる)

[arca] #縁日 千房'sセレクト。
[kurov] #千房:「あたしは千房、名字はまだない。」

    千房:「歩さんか。おれは千房ってんだ。」
    歩:「うん、よろしくね千房ちゃん。」
    千房:(竹ひごを一本歩に差し出す)「通りかかったっつってたけど、この近くに住んでんの?」
    歩:「ええ、少し離れた六結商店街(モノノケ商店街)って言う所に住んでるの。」
[
arca] #竹ひごを受け取り、いただきます…と手を合わせる。

    千房:「商店街?お店やってんだ。」(たこ焼きに竹ひごを突き刺し、一つ無造作に口に放り込む)
    千房:「!!」

[kurov] #口を押さえ。

    千房:「ほ、ほひぃ!」

[kurov] #はふはふほひほひ

    歩:「あっ大丈夫?水は…。」

[arca] #ジュースを手にとりさしだす

    千房:(手でさえぎり)「はひっ、はひっ、はひひょふふっ。」
    千房:(熱さに耐え切って食べきり、ジュースを受け取って口に含む)
    歩:「ほんとう?…無理しない方が良いわよ。」(自分もハフハフしつつ食べる
    千房:「あひ……熱かったは……火傷しちゃったよ……。」
    千房:「中生じゃん、もっとこう固まってんのかと思ってた。」
    歩:「大丈夫?できたてだもの。それに、最近はとろとろなのが流行ってるらしいし。」
    千房:「まあでも、うん、うまヒ。」
    歩:「のどまで焼かないようにね。」

[kurov] #もう一つとってふーふー冷まし。
[arca] #ウフフと微笑み。

    歩:「…(あのオヤジさんなかなかいい腕してるわね…タコのサイズ、皮の部分も絶妙な厚み。」(はふはふ
    歩:「そう言えば、お店のことだったわね。私は商店街で喫茶店をやってるの。」
    千房:「喫茶店かあ。なんて名前?」

[kurov] #ちなみにモノノケ商店街ってウル中からだとどのくらいの立地でしたっけ。
[arca] #設定はないけども、それほど遠くはないんじゃないかな。

    歩:「アネモネラウンジっていうの。アネモネの上に小さな蜥蜴が乗った看板よ。」

[arca] #たこ焼きもぐもぐ。

    千房:「アネモネラウンジ、か。覚えた。んじゃこんど行くよ、たこ焼き代返しに。」
    歩:「ありがと。でも、たこ焼きごちそうしてもらったし、たこ焼き代とかは気にせず遊びにきてね。」
    千房:「そういうわけにはいかねーよ。これは好意に対するお礼ってやつ。ほら、他のも食ってよ。調子のって買いすぎたけど一人で食べてもしょうがねーしさ。」
    歩:「確かに、よく考えると一人前って量じゃないわね。やっぱ周りに大食漢がいると麻痺して来るのね…。」
    千房:「それ彼氏?」
    歩:「ううん、家族…弟とか息子みたいなものよ。」

[arca] #お好み焼きを食べつつ。

    千房:「そっか。彼氏はいないんだ?」
    歩:「あればあるだけ食べちゃうのよね。まーおかげでお店のあまりの処理が楽なんだけど。」
    歩:「彼氏?…んー、いたようないなかったような。多分いないわ。」
    千房:「たぶんって。」(笑う)
    千房:「そんな不確定なもんか、彼氏って?」
    歩:「えへへ…実はね、ちょっと前の記憶があいまいなのよだからその期間に居たかもしれないけど。連絡とか来ないし、居ないと思うわ。」
    千房:「そ、そか……。」(ばつが悪そうに俯く)
    歩:「気にしないで。特に支障もないし。」
    歩:「焼きそばもなかなかいけるわね…。」
    千房:「なんかすんません……。」
    歩:「そ、そんなかしこまらないで?ごめんね変な事言って。」(慌てて微笑む

    歩:「…(やっぱり、一般的にはこう言うのは敬遠されるのね…気をつけないと。」

    千房:「ええと……んじゃ、オレもうちょっと縁日見て回ろうかと思うんだけど。」
    千房:「歩さんはどうすんだ?」
    歩:「そうね、特に用もないし。私ももうしばらく縁日の様子を見てると思う。」
     千房:「そか。じゃあ……アネモネラウンジだっけ。今度行くよ。」
    千房:「じゃな!」
     歩:「うん、またね。」(手をゆっくり振り
     歩:「…(ボーイッシュな感じだったわね。女の子に人気がありそう。」(メモ帳に出会いを記録しながら

[kurov] #ちびだし口悪いし素行も悪いのであまり人気はないとおもわれた。
[arca] #王子系ではなかった。

    歩:「さっきのたこ焼きおいしかったし、隣のイカ焼も合わせてハクリンのお土産にしよっかな。」

[arca] #ゆっくりと立ち上がり、縁日のなかへ戻っていく。

[arca] ---

 


 夜の街を怪異を求めて彷徨う歩。近所の神社で縁日を催しているのを見つけ、様子をみる。そこで出会ったのは千房という少女だった。

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