狭間06エピソード集
私立探偵部の日常
エピソード『温室の影』
- 佐藤火星
- 私立探偵部部員だが趣味園芸で、園芸部にも出入りしている。
- カウラアード・シルフィ・ルートスペード
- 私立探偵部の先輩。
- 御所ヶ谷沙良
- カウラのファン。魔術の研究仲間。
- 三城岳閑
- カウラのファン。カウラより探偵能力が高そう。
- 佐和山伊織
- カウラのファン。何か心当たりがあるようだが……
- 舞松原郁平
- 火星人の恐怖に気付き、退治しようと思い立った勇者。
[
utako] #ウル中、園芸部
- 火星
- (ミニ温室のガーデニングボックスに次季の植物を植えている)
- 火星
- 「ついでに余ったミニチュアも……」(と、勝手に装飾を整えつつ、メモを確認して順を間違えてないか確かめる
- 火星
- 「それにしても……ミント、リンドウ……に、アップル、レモン……、なんて匂いが強いのばっかり一緒に」(勿体無いなぁ、とぼやきつつ
- 火星
- (メモをビニールに入れてプランターに貼り付け、立ち上がろうとする時に温室の鳥避けに人の姿が見えた気がして振り返り……)
- 火星
- 「……?」
- 火星
- (誰も居ない。離れた場所に園芸部の生徒が見えたが、映る様な場所にはいなかった。以前にも似たような事があった気がしたが……良く思い出せない)
- 火星
- 「……?」(首を傾げて、気のせいかと頭を掻き……
- 火星
- 「あ゛……」(土が髪について少しへこむ)
- 生徒
- 「……な、何でバレたんだ、今の……」
- 生徒
- 「……探しに来ない、……見られてないのか?」
[utako] #温室の近く、火星が人影を見たあたりでひそひそと独り言がする。
- 生徒
- 「……そういう、超能力みたいなのが……、それとも……」
[utako] #恐々とした独り言は風の音に紛れて消える。
ウル中、第二理科準備室こと沙良の部屋。
- SE
- コンコン
- 伊織
- 「ンニャー……誰か来たニャー、沙良ー早く出ろっつーの」
- 閑
- 「カード、預かりますよ」
- 沙良
- 「言われなくても解ってるよ、後預けないよ。見るつもりだろう、君は」
- カウラ
- 「……ちょっと、居るんでしょ?」
- 沙良
- 「おっと、いらっしゃい。カウラさん。……あれ? 今日は勉強会もなかったと思うんだけど、僕に用かい?」
- 伊織
- 「浮気か!? 浮気の現場を抑えてしまったからにはそれをネタに脅して私が無理やりニャンニャンして良いのかニャン!?」
- カウラ
- 「良い分けないでしょ。それに違うわよ。ちょっと3人に聞きたい事があったのよ」
- 閑
- 「聞きたい事ですか? あの……、あまり恥ずかしい事でなければ、なんでも」
- 沙良
- 「君達も、もう3年になるんだからその調子を変えるべきだと思うよ」
- 伊織
- 「肩に手を回しながら言ってンじゃねーっつーの! このムッツリスケベ!」
- カウラ
- 「……先に話を良いかしら?」
席に着き。
- カウラ
- 「貴方達……最近、探偵部の監視なんてまたやってないでしょうね?」
- 閑
- 「やってないですよ。私はそう言うのは向かいですし」
- 沙良
- 「僕もやってないよ。いや……、また?」
- 伊織
- 「あー……去年の夏前頃に、バイトでちょこっと私がネー、やってたンだけど……気づいてたの、あんた」
- カウラ
- 「あの時期、後輩が変な視線を感じるとかその話を貴女にした時に態度変わったから、何となくなのだけれど……やっぱり」
- 沙良
- 「ポーカーフェイスは被れないよね、伊織さんは」
- 伊織
- 「私ー、心がー、綺麗ーだからー?」
- 閑
- 「案外、正直者ですよね。慣れると解り易いです」
- 伊織
- 「うっせー! ……で、またって事は誰かに監視でもされてんの?」
- カウラ
- 「いえ、はっきりとした事はまだ解ってないのだけれど……、私もちょっと思い当たる事があったから聞きに来ただけよ」
- 伊織
- 「……」
- 閑
- 「……」
- 沙良
- 「……」
- カウラ
- 「……何で貴方達が黙るのかしら。もしかしなくても、貴方達……また覗き見染みた事をやってるわけじゃないでしょうね」
- 伊織
- 「してないしてない、私は絶対やってない! ほらークラス別だしー部活忙しいしー、林の中から出て来た子猫に猫撫で声でニャンニャン言ってた事なんて知らないニャン!!」
- 閑
- 「わ、私も無実です! 踊り場の鏡の前で、誰も居ないからって一回転してみたりアイドルの真似するようにマイク持った振りして鼻歌を歌ってたなんて、知らないです!」
- 沙良
- 「僕は二人より接触する回数が多いと言う事を念頭に置いてくれるかな。何もしてないけどね。制服の下に体操着を着ているつもりで動いていたら実は着ていなかったなんてありがちだから、知らないよ。見てないよ、そう言うこともあるよね、って話で」
- カウラ
- 「……ぶっ飛ばすわよ、貴方達」
- 伊織
- 「偶然っつーか、偶然の重なりっつーか」
- 閑
- 「そ、そうです。たまたまですよ」
- 沙良
- 「ただのウォッチングだったんだよ」
- カウラ
- 「……そう言う心当たり以外に、探偵部の後輩を監視しているような話を聞いたりした事は無いかしら」
- 閑
- 「どの子によるか、ですね」
- カウラ
- 「……どういう事かしら?」
- 沙良
- 「私立探偵部の異常性に気づいている生徒は、それなりに気にしている、ぐらいかな」
- カウラ
- 「部長が……格好つけたがり?」
- 伊織
- 「そーいう事じゃなくて、探偵部ってあれでしょ。言ってしまえば、万屋、ヘルパー、問題解決部。ボランティア部なんて酔狂な部活もあるケドさ、そーいうんじゃないっしょ」
- カウラ
- 「請け負う範囲は確かに多いとは思うのだけれど、基本的に無償で依頼をこなす、と言う事はボランティア部とはあまり変わらないわよ」
- 閑
- 「いえ……、何ていうか、類は友を呼ぶ、と言うんでしょうか。そう言うのが部活なんですけど、その類と友に問題があるような……」
- 伊織
- 「要は、技術的に共通点があるわけでもない特異そうな人間が集まってンのが変なワケ。若干、正体不明なのが混じってるし……」
- カウラ
- 「部長が鏡君なのだから、仕方ないわよ」
- 沙良
- 「良くも悪くも、そう言う事なんだろうね」
- カウラ
- 「彼がやりたい事をやるために作ったのだから、部員も自分のやりたい事をやる。やらなければならない事をする。難しいことであれば互いに助けあい、教えられる事であれば伝える。ただ、そう言う部活なだけよ」
- 閑
- 「……遊んでる事も多いですよね」
- カウラ
- 「やる事が無いときは自己研鑽、レクリエーション、当然じゃない。楽しいわよ」
- 伊織
- 「すっかり探偵部だし、彼氏が部長だっつって褒めてんじゃないのかニャー?」
- カウラ
- 「ち、違うわよ! 別に部長じゃなくても、彼氏じゃなくても、素直な感想よ! 贔屓はないわ!」
- 閑
- 「そう言う事にしておきましょうか。噂の件、過激な反応に出ている生徒がいないかちょっと聞いてみます。自覚症状のない生徒だって居るかもしれないですし」
- 沙良
- 「一番面倒な所だね、それは」
- カウラ
- 「……、助かるわ。貸しにしておいてくれるかしら」
- 伊織
- 「トイチ? トイチ?」
- カウラ
- 「……貴女はやらなくて良いわよ、貸しにしないから」
- 伊織
- 「酷いー! トイチなんて言わないから貸りて行ってー!」
- カウラ
- 「……全く。何もでなかったらそれで良し、何かあったらこっちで対処するから、貴方達は直接的に動かないでよ。特に……佐和山さんは」
- 伊織
- 「後輩に手を上げる程野暮じゃないニャー」
- カウラ
- 「そう信じてるわよ。それじゃ、私は部室に戻るわね」
- 沙良
- 「またどうぞ、お気軽に」
退室していく。
- 閑
- 「……犯人、1年生なんですか?」
- 伊織
- 「なんで?」
- 沙良
- 「後輩には手を上げないって言ったじゃないか、君が」
- 伊織
- 「……あ」
- 閑
- 「教えないなんて珍しいですね」
- 伊織
- 「カウラに直接害があるわけないしさ、事が一年坊同士で、それが探偵部なら問題ないっしょ」
- 沙良
- 「君は友達には優しくても知人には冷たいね」
- 閑
- 「他人の面倒までは見れないって、冷たい事でもないですよ」
- 沙良
- 「……君達は、時々怖いよ」
- 火星
- (放課後。用務員のおじさんに貰ったカンロ飴を口の中で転がしながら、ガーデニング道具の片付け)
- 火星
- 「夏には野菜が穫れるように端っこの方でやらせてもらおうかなぁ……、土も良くなって来たし」
[utako] #鼻歌歌いつつ、ふと夕陽に振り向いて今日も良い仕事したなぁ、なんて心地よい疲労感に浸っていると
[utako] #建物の影からアルミホイルを貼ったバケツに覗き穴を作った手製のヘルメットらしきものを被った男子生徒がゆっくりと姿を現した。
- 火星
- 「……(な、何か変なの居るぅ!?)」
- 生徒
- 「ハー……ハー……」
- 火星
- 「さ、さささ、さっさと片付けて帰らなきゃなぁ……そうだ、母さんから御遣いとか頼まれてた気がするし、急ごう! うん! 凄い急ごう!」
[utako] #いつもなら丁寧に片付ける道具類を詰め込むように物置に入れて、走った
- 生徒
- 「あ、待て! ……宇宙人!」
[utako] #追いかけてくる
- 火星
- 「そっちが宇宙人だよぉ!! 誰!? 何!? それ、何被ってるの!?」
- 生徒
- 「良く聞いたな! ……これは宇宙人による電波を遮断する事ができるらしい、毒電波遮断メットだ! 待て! 宇宙人! 今日こそ、お前の正体暴いてやるー!」
- 火星
- 「暴かれるものなんてないよぉ!!」(角を曲がり、大きく吸い込んで止め。
- 火星
- 「(見えなく―――なぁれ!!)」
[utako] #しゅん……と火星の姿が透明になり、そのまま壁に張り付いてやり過ごそうとする。
- 生徒
- 「他の奴らに解らせてやるんだ! 宇宙人が紛れ込んでる事、を……」(続いて角を曲がり、居なくなった事に驚く
- 生徒
- 「な、何で……どこに隠れたんだ、あいつ……」(覗き穴がずれるバケツメットを両手で抑えながら、明後日の方を見てその場でぐるぐるしてる
- 火星
- 「(ふっふー、成功……見えてない。けど……早くどっか行って……)」
- 生徒
- 「お、俺までついに毒電波に……そんな、ヤフー知恵袋で、これが効果あるって言ってたのに……」
[utako] #よろめいて壁に手をつき
- 生徒
- 「……まさか、あいつは加速装置みたいなものを……、そう、それなら……まだ俺は……」(根拠もなく、大丈夫だ! と頷いて
[utako] #ふよんふよんと手が壁を揉む
- 生徒
- 「ん? ……それにしても、柔らかい壁」
[utako] #徐々に透明化が切れ、ぱっちり目を開いて顔を真っ赤にした火星が現れる。
[utako] #生徒の手はしっかりと片乳の位置。
- 生徒
- 「……う、うわぉぁああ!?」
[utako] #乳を触った事より急に現れた宇宙人に飛びのき
- 火星
- 「さ、さわ……わわわわ―――ひやぁあああ!?」
[utako] #長い腕による平手打ちが、生徒のバケツメットを粉砕する。
- 生徒
- 「―――ヘブラシカッ!?」
[utako] #投げ飛ばされたように転がっていき、気絶する
- 火星
- 「はぁ……はぁ……、あ……!」
[utako] #
- 生徒
- (完全に白め向いて鼻血出してる)
- 火星
- 「……」(サー、と青くなり
- 火星
- 「う、埋めて……じゃなくて、保健室……保健室!!」
[utako] #慌てて生徒を保健室へ運んで、逃げた
[
utako] #1時間ほどして
- 生徒
- 「……はっ!」
[utako] #保健室のベッドの上で飛び起きる
- 生徒
- 「……ど、どこだ……ここは、まさか……宇宙人の実験室的な……」
- 保健医
- 「保健室よ」
- 生徒
- 「……よく見れば見覚えがありました、すみません、寝ぼけてました」
- 生徒
- 「(なぜ保健室に……? たしか、宇宙人を追いかけていたはず……)」
- 生徒
- 「くっ……記憶が! これもあいつの毒電波の影響か! ……何故かほっぺも痛い!」
- 保健医
- 「そろそろ下校時間だから帰りなさい」
- 生徒
- 「あ、はい……」
- 生徒
- 「(俺の毒電波妨害……遮断、どっちでも良いや。バケメット……どこだ、見つかったらちょっと恥ずかしいのに……)」
[utako] #きょろきょろしつつ、ふとガラスに映った自分の顔を見て……驚愕する
- 生徒
- 「すっげー……赤い」
- 保健医
- 「女の子が謝ってたわよ」
- 生徒
- 「……女子が?」(ん? と首を傾げて、手をわきわきと動かし
- 生徒
- 「……あ」
[utako] #フラッシュバック・乳
- 生徒
- 「接触に成功、……ファーストコンタクトは、ファーストコンタクトは……!」
- 生徒
- 「柔らかかった……」(なぜかガッツポーズ
- 生徒
- 「俺は諦めんぞ、宇宙人!! ……ステップ2に進行する!」
- 保健医
- 「そうだった、帰る前に利用者名簿に記入してから帰りなさいよ」
- 生徒
- 「……はい」
2013年3月
温室で、見えない人影に遭遇する火星。果たしてその正体は……
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とにかく、元気いっぱい!ぶらりんぱわーではぴはぴ!
常識的な子は少ないけど、それでもあまり修正しないところがはぴはぴ!Paとジト目担はこちらです
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