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狭間06エピソード集

エピソード『私だけのもの』




目次





エピソード『私だけのもの』


登場人物



無戸室近衛
我儘な男。
緋昏歩
やりきれない女。
ハクリン・ウィン・ビギニングハート
近衛と歩の子供。

正月の歩




「みんなへのお年玉、いくらぐらいが良いかな…」


[arca] #宛名を書いたポチ袋を見て悩んでいる




「渡す方法も考えないと。クリスマスみたいにサンタさんが届けてくれる訳じゃないし…」


[utako] #門松に扮して




「獅子舞とか?…だめだめ、姿見せちゃってるし」


[arca] #それぞれ浮かれ過ぎない程度の額を詰めながら




「自律してる子達にはお金じゃなくて商店街の商品券にしよっと」

「年末年始は色々あって忙しいわ」

「イヴ休んだ分正月休みもないし」

「どうしようかなー…」


[arca] #詰め終わり考える




「ハロさん達に相談するって訳にもいかないし…」

「やっぱり、近衛に相談しようかな」


[arca] #ポチ袋をタンスにしまう




「夜にWhiteLineで相談してみよっと」


[arca] #お年玉のあげ方を相談しにいく歩
[utako] #ういうい




「ドイツではなにやってるのかなー」

「……また嫉妬しちゃった」(溜息

「きりかえよう」


[arca] #頷いて開店の準備を始める


閉店後、WhiteLine



[arca] #後片付けを終えてWhiteLineへ




(きょろきょろ)「近衛はまだ来てないみたいね」


[utako] #何日頃だろう
[arca] #元旦くらい
[utako] #時系列的にロザ父との勝負前に合流しておこう




「街の様子は変わりないみたいね」


[utako] #ドイツ行きの間、歩がWhiteLineに入る度に合流場所は移動し、現在は南部よりの地帯。
[utako] #近衛がドイツに行く前に気になる事がある、と言っていた様に各地の見回りも兼ねている。




「見回り見回りー」


[utako] #歩が今回出たのはとある街の一つ、顔は獣寄りの半獣人の人種の街で、それなりの賑わいを見せている。
[utako] #少し間を置いて、歩が出てきた扉から黒着物黒羽織の正装で現れる近衛。




「平たい顔族とは違うのね…あ、近衛」
近衛
「よぉ。こっちは少し暑ぃな…、ちゃんと日除け持ってきたか?」

「やっほー。ううん、帽子は持ってきたけど」(季節外れの麦わら帽子


[arca] #歩も羽織を纏っている



近衛
(羽織があれば良いか、と頷いて) 「……よし。んじゃま、ちょいと街を抜けるか…どうにも、俺達の大きさじゃ目立つ」


[utako] #周囲の方がやや小さい




「うん」


[arca] #少々遠慮がちな距離でとなりに並び歩く



近衛
(羽織の中で生成した獣顔の御面を歩に被せて手を握る) 「南部は向こうか……、足元に気ぃつけろよ」

「うん」(微笑んでお面を被り直す


[utako] #裏通りに入り獣人の間を縫って進み郊外へ。街を背にすると、WhiteLineの名前通り、白い地平線がどこまでも続く。



近衛
(逃げる途中に失敬してきたセロリのような果物を羽織から出しながら) 「ちょいと、今日は歩きになるか」

「あれ、いつのまにそんなの持ってたの?」(果物を見て
近衛
「道端にあったのを拾った。美味いぞ、水分の持ちも良い」 (ポキッと半分に折って渡しつつ

「…ほんとだ、スッキリとした味わい」(ぱりぽり

「ありがと近衛」
近衛
「あぁ。あ…、明けましておめでとさん。歩」 (ぽりぽりと齧りつつ

「うん。あけましておめでとう近衛」(微笑む
近衛
「そっちは別段、変わりねぇか?」

「うん、毎日元気だよ。…と言いたい所だけど、ちょっと風邪気味かな」
近衛
「ん。……それじゃ、今日は散策すんのやめて休憩するか」

「大丈夫、ちょっと鼻が詰まるかなーってだけだし。そっちこそ、どう?ドイツは」
近衛
「流石に外はそれなりに寒いが、城ん中でぬくぬくしてるさな。竜がやたら元気で影蜥蜴達が困っちゃ居るが」

「竜くんが?めずらしい」
近衛
「去年、影に負けたせいだろうなぁ…今年も負けちまってたから、来年はもっと酷くなりそうな気がするさな」

「あんまり外に出ないせいかまだまだわんぱくなのね」


[arca] #笑いつつ竜の姿を想像



近衛
「あれはもう意地だろうな…、身体的にもパワー的にも負けてる影にやられっぱなしなのが、ドラゴンの矜持か何か知らんが、引っ掛かるんだろうさ」


[utako] #暫く歩いてから、素手で地面に穴を掘り始める。




「ドラゴンって言えば最強って感じだもんね。それに相手は蜥蜴だし…ふふ」

「なにしてるの?手伝う?」
近衛
(瞬く間に地面を階段状に堀り下げ) 「ここの地面を削るのは結構難しい……、ちょいと着いて来いよ」

「わかった」(後について行く


[utako] #足元が解るように安いサイリュームを地面に落としつつ、次に水平に掘り進み、6畳分ほどの部屋を作った後に通気口を作り、瓶を取り出し中に入っていた虫を放つ



近衛
(放たれた虫は壁に張り付き、照明代わりになるほど綺麗な明りを灯し、扉、ベッド、机、椅子と作ってから) 「ここは荒野ばかりの何もねぇ土地だが、それでも砂漠みてぇに砂嵐が来る時もあるからな…、風邪っぴきはちょいと養生しろよ」


[utako] #即席で一室作ってしまった




(サイリュームをひとつもって)「…ごめんね」(眉を八の字にしつつ微笑む
近衛
「クリスマス商戦休んだ分は、年始から力入れてんだろ?」


[arca] #サイリュームをモジモジといじりつつ「ありがとう」と続ける




「うん、正月休みは取らないで平常運転」
近衛
(ベッドメイクして、ぽんぽん、とマットレスを叩く) 「やっぱり…、休め、とは言い辛ぇが、せめてここで1日分休んでけよ。それぐらい、ここの神様も許してくれるさな」

「神様って、近衛に入ってた神霊のこと?」


[arca] #ベットに腰掛けつつ



近衛
「いいや、俺」


[utako] #言ってからちょっと恥ずかしくなった




「…神様が言うんなら、お言葉に甘えちゃおうかな」


[arca] #微笑んでサイリュームを置く



近衛
「羽織りは布団の上からかけといてやるから、そのままで寝難いなら着替え要るか?」

「大丈夫。中で脱いで下着になるから」


[arca] #布団を被りもぞもぞ



近衛
(天井や床に触れて、適温になるように室温、湿度の調整し羽織の中からごそごそと飲み物と食べ物を取り出して机に置く)
近衛
「器用さなぁ…」 (と言いつつ、見てる。超見てる。

「近衛もんは至れり尽くせりね。のびたになっちゃいそう」

「のぞいてもいいよ?」(ふふ


[arca] #するすると着ていたジーパンと上着が布団の裾からでてきた



近衛
(服を受け取り、畳んで置きながら) 「のぞかねぇよ。そんな……後でマットレスをくんかくんかするから良いさな」

「ついでにその服も嗅ぐの?」
近衛
「服か…、服はやめとくか。意外な所で意外な異臭がしたら反応に困るじゃねぇかい」

「そ、そんなのしないわよ」(赤くなって顔半分まで布団に潜った
近衛
「甘い匂いがしても、それはそれで困るさな」(ベッドの脇に座って、くしくしとおでこを撫でる

(気持ちよさそうに眼を瞑り顔を出す

「ちょっと、嗅いで欲しいな、なんてね。………そうだ。近衛、ちょっと相談したいことがあるの」
近衛
「ん?どうした」

「あのね、お正月だから子供達にお年玉あげようと思うんだけど……どうやって渡すかで迷ってるの」
近衛
「年賀状に送付して贈るのが良さそうだが…、手渡しで渡してぇのか?」

「できればそうしたいけどね…」

「絶対そうじゃなきゃダメって訳じゃないから、送るのでも良いんだけど…」
近衛
「影蜥蜴と横臥はまた店に行くつもりみてぇだったさな。その時に渡しておくってのも、良いんじゃねぇか?」

「そっか…貴弦くんの所は直に行くとして、その時に他の子達の分も渡そうかな?」


[arca] #布団の中で長い脚を動かし、ちょっと近衛に近づきつつ横向きになる



近衛
「誰かに預ける、て以外だと……あとは、変装してでも家に来て配る、とかか?」

「…クリスマスの時は直接会わなかったから良いけど、あったらバレちゃいそうだわ」

「それに変装って言っても、なにに変装するのよ」
近衛
「……獅子舞、とか……、あぁ。商店街にほら、怖ぇライオン丸居るだろ。獅子王って名前の貴ぐるみ。」

「着ぐるみじゃないわよ。 …いつもキグルミ着てるけど

「獅子王さんと知り合いなの?」
近衛
「ちょいとな。俺の先祖様の創造物らしい」

「え……そ、そうなんだ。世間って狭いのね…ハロさん達も近衛の縁だったし…」

「どこ行っても近衛とは縁は切れないみたい」
近衛
「人はどっかで繋がってるもんさな」 (自分の羽織を脱いで椅子にかけ、ごろんと横になる)

「そうね…………」
近衛
「ハロ達が居なくても、スーパーで一人で惣菜食ってる所には…多分出くわしたかもしれねぇし、居たから出くわしたかもしれねぇし、世の中狭いが解らんさ」


[utako] #横向きつつ、にかりと笑う




「そう言うの私だけだったら良かったのに……」


[arca] #聞こえるか聞こえないかくらいで小さくつぶやく



近衛
「……上手くいかねぇのも、世の常さな」 (腕を枕にしつつ、頭を撫でて

(ピクッと眉が動いたが)「……、……中入る?」


[arca] #少し布団を開く



近衛
「……お邪魔します」


[utako] #もぞっと布団の中に入る




「……」


[arca] #近衛を布団で包み、そのまま自分は顔を隠した



近衛
(腕枕をしてやりながらそっと抱いて、眼を閉じる)

(息を殺すような感じにギュッとしている
近衛
(暫くそのままで居たが) 「……暑くねぇか?」

「暑いけど…今の顔見せたくないから…」(もぞもぞとまたちょっと潜った
近衛
「…そうか」 (首を少し上げて、顔を首筋に顔を埋めながら強めに抱きしめる

「……」(静かに、堪えるような憤りの吐息
近衛
「……怒ってんのか?」

「……上手くいかなないのが世の常なんて、良く言えるよね…」
近衛
「…そりゃ俺がそうだからな。」

「…どういう風に?」
近衛
「一重にお前達の事だろうな…、上手にやれてりゃ。こうはならなかったんだろうな、と思う。…ひと時は満悦に幸せを、また苦労も苦しみも来る。上手くやれてりゃな、ってな。でもはき違ぇねぇでくれ、上手くいかねぇ事ばかりと言ったわけじゃねぇからな…」

「上手くって、なによ…。近衛にだけは世の常とか、言われたくなかったのに…そんなあきらめた風に言わないでよ……」
近衛
「…上手くいかねぇ事もあるさ、程度のつもりだったんだがな。悪い…」

「わかってるの…わかってるけど。…私の1番大事なことなんだもん…それが上手くいかないんだもん……」

「もうヤダ……植物にでもないりたい……」
近衛
「俺の一番大事な事も、上手くはいってねぇさ。……ここで死に掛けた時に、諦めて死んでりゃ悩む事も苦しむ事もねぇんだろうな、と思ったが……同じぐらいに幸せも感じなくなるんだと思ったら、まぁ……上手くは出来ずとも、俺は頑張る事ができた」

「………近衛の1番大事って、なに?」
近衛
「そんなのは初めから変わらねぇさ。皆で笑顔で茶でも飲んで、のんびり馬鹿な話でも出来たらな、ってな」

「……」
近衛
「言うにほのぼのとして良いもんだが、これが難しい」

「私だって、そうしたいわよ……でも近衛、そうしようとしてないよ…」

「……、ごめんなさい…」
近衛
「いや、………そうか、してねぇか」 (やや声が小さくなり、一層抱く手に力が篭ったが…少しして緩めた)
近衛
「…難しいな」

「近衛の1番大事、叶えてあげたい…けど、そしたら私の、諦めないといけないね…………」
近衛
「俺の全てが欲しい以上は、それを諦めるしかねぇ……そう言う道を選んでくれたと思っちゃいたが、難しい、か…」

「本当の最初の頃は、それでも良いって思ってた…。ローザちゃんが現れてから、ああ、また先をこされちゃったなって諦めたの…でも気付いたら、こんな感じ」

「まだ、諦めきれてないみたい……」
近衛
「俺の全てが欲しいと言うのも……、一時の迷いなのか」

「ううん……本当よ。でも、でも…近衛の言う、全部とは違うんだよ……きっと」
近衛
「……そうか、……迷いじゃねぇなら、何…俺がちょいと夢を見ただけなら、それで…良い」 (小さな声で、愛しく優しく、ゆっくりと頭を撫でる)

「……この前、ローザちゃんとここへ来たでしょ……?そこで、イチャイチャ、してた…やっぱり、悔しかった。…きっと今より酷い顔してた…」

「どうしたらいいんだろ…」
近衛
(どうやって歩がそれを知ったかは解らないが、事実) 「誕生日だったからな、……使える場所とはいえ、俺の行動は軽かったさな……悪い」

「…匂いって、罪よ……。どうでもいいけど…」
近衛
「鼻が良いな…(ゆっくりと手を離して、起き上がり) …俺は、夢を見るのをやめよう。親父も、お袋も、諦めた…歩、何より執拗にお前を求めたのは俺だ。別れたお前を繋ぎとめたかったのは、俺だ。どうにかして戻って来てくれねぇかと諦められなかったのは、俺だ……悪かったな」

「…私、だって……たくさん、求めてる…」
近衛
「そうだな……、俺も、お前も求めてる。ただそれだけなら良かったのかもしれねぇが…」 (笑顔を作るべきかどうか迷い、妙な表情になるのを片手で隠して、また愛しそう撫でようとして手を止める。

「…撫でてくれないの?」
近衛
「……俺は、歩を…お前一人を選ぶ事ができねぇ。おかしいんだよ、俺は…愛だ愛だと言っておいて、お前がいなくなれば困るのは、俺じゃねぇ、横臥や影蜥蜴達だと心配している、他も、同じだ……ローザが居なくなれば、カウラが困る、死レ未がいなくなれば、ニーナが、死んだニーナを連れ戻してまで、俺は愛を叫んで……」 (支離滅裂な事を言いながら、手を戻して羽織を掴み、顔も姿も隠すように被る。

「…みんなが大事なのは私だって同じよ…誰かが居なれば誰かが困るのだって、わかるわよ…」


[arca] #起き上がって撫でて欲しかった分近衛を撫でる




「それも愛よ。私もその愛を持ってる、人一倍持ってるって思ってる。……でも、近衛への想いはそれとは別なの……少なくとも、私はそれで近衛と通じ合ってると思った。今でも……そう信じてる…」
近衛
「一人の女として…友人として、人として……真っ当な愛を、歩に捧げても……、その愛は俺の今居る場所からの愛だ…」

「……頑固」
近衛
「同時に……何人も愛しているのは、真っ当もねぇ……か、そんな俺の心は…要らんだろう。その頑固が無戸室近衛だと、捨てちまえ……その方が、幸せになれるさな」

「…いや。…私も、頑固なの……じゃなかったら、今こんな会話してないわ…。また、振り出しか……」
近衛
(羽織の隙間から赤い眼を覗かせながら) 「俺はお前の夢を叶えさせる事ができねぇ。そこに不幸しかねぇなら、……不幸になるなら俺の所で不幸になれ。…白馬どころか、黒達磨だ……、だが……別の、直ぐには見つける事も出来ねぇだろうが、別の夢を与えられる様に……努力する、から、俺の所で不幸になれ…歩」

「不幸はやだな…夢も諦めない……私、もう遠慮とかしないよ?……ローザちゃんとか、…一杯、怒らせるかもしれないよ?」
近衛
「遠慮し過ぎて、言いてぇ事も言えねぇような家族…俺が願い下げだ。……調和ってのは必要かもしれねぇが……、出来るだけやりてぇことはやれる様に…皆、自由に面白ぇ家族になれるように…努力する」

「努力…か……」
近衛
「……俺が気を揉むのも、おかしいか?」

「ううん…ただ、子供達はどう思うかなって」

「私が別れようと思ったのも、子供達にこれ以上こんな……その、教育上良くないかなって、思ったのもあったから…」
近衛
「お前が居なくなる方が……教育上がどうより、影響が悪いさな」

「結果的に、そうなっちゃったわね……いまもこんなんだし……」

「やっぱり私、みんなのママで居たいな。ローザちゃんには、譲りたくない…けど…」
近衛
「俺は、全員がそれぞれ教えられる事があって、教えられねぇもんがあると思ってる……譲りたくなかろうと他者の長所は認めて、委ねる。変な家族だが、うちはそれで良いんじゃねぇかと…思うさな」

「選ぶのは子供達なのはわかってるわ…でも……」

「私だけのものってなにかな……」

「近衛もダメ、子供達もダメ……自信なくなってきちゃった…」
近衛
「共有何て嫌、と俺にもあいつらにも酷な事を言ってくれるなよ……泣くぞ。ちっと泣いちまったが…、それでも自分だけの物が欲しいってんなら、次は……しっかりと二人の子を、作るってのもある」

「私とだけ子作りしてくれるって事? そんな分けないわよね……こんな考え方したくないけど…そう考えちゃうな…」

「ローザちゃんは正妻って言う拠り所があるし……」
近衛
「ローザがまず……、俺の心を認めて、歩を認めて、ニーナ、死レ未、乱を認めたからな…、歩は他を認めれてねぇ、だからとも言える」

「ちがうわ、正妻だから認めてるのよ」
近衛
「歩が正妻だったら……いや、それならそもそもこんな状況を許しはしねぇか…確かに正妻だから認められたのかもしれねぇ」

「私を受け入れる条件がそうだったもの。……思えば、あれが……はぁ…」

「もしかして今まで無条件で認めてくれてたなんて思ってないわよね…」
近衛
「思っちゃいねぇが、正妻に拠る所は痛い程解るさ」

「無条件だったらニーナちゃんの時にあんなにもめたりしないわ」

「………」


[arca] #その後の死レ未と乱のことまで巡り憤る
[arca] #考えれば考える程悔しくなり頬を熱いものが伝った



近衛
「…そうして巡るか。先を見てくれ…歩」

「はぁ……先って、どんなの?」
近衛
「…俺の所で不幸になるか、捨てて幸せになるか」

「捨てたって不幸よ…」
近衛
「俺の所に居るよりは幸せになれるさ」

「比べようがないわ」

「近衛を失うこと以上の不幸なんて今までの人生にはないもの」
近衛
「…歩が納得できる、歩だけのものはできるだけ探すが、歩が自分の子さえ……だけのものと思っちゃくれねぇなら、俺には時間が掛かる…、その間は不幸かもしれねぇ」

「…ごめんなさい、わがままで…」
近衛
「良いさ。……だが、ハクリンはちょいと抜けてる所もあるが、紛れもなく…、歩だけを母親と慕って着いて行ったのを、忘れてやらねぇでくれよ」


[utako] #眼を伏せて




「わかってるわ……」

「……やっぱり、まだ戻れない…」
近衛
「……幾らでも待つさ。俺は……だが、もっと明るく先を見てくれ。後、風邪はこじらせるなよ」

「不幸にするって言っておいて明るくなんて……。うん」(布団に潜り直す
近衛
(羽織に包まったまま、扉の前に立ち) 「不幸にする……俺の所に居たらな、だが、不幸にするだけで諦める俺じゃねぇさ。できるだけ幸せに上げてみせる…言ったように時間はかかる、直ぐに、なんてできねぇが……絶対にだ」

「それが、もっと具体的なら希望が持てるんだけどね……」(寂しそうに微笑み

「いつも、肝心な所は口ばっかりなの、気付いてる……?」
近衛
「俺が希望を持ってねぇからな…、…………知らねぇだろうな」


[utako] #羽織を被りなおし、灰色の髪を靡かせながら出て行く。




「あ、近衛っ……」

「希望を持ってないって…なによ…」


[arca] #急いで服を着て、羽織を纏い後を追う
[utako] #扉を出ると、そこはアネモネラウンジ
[utako] #振り返っても先程居たWhiteLineの地下室はない




「あれ……。近衛…」


[arca] #何度か呼ぶように近衛とつぶやき、座り込んだ




「これじゃ、謝ることもできないじゃない……」


[arca] #すすり泣き



ハクリン
「……歩?戻っているのか?……どうした?何か…」


[utako] #人の姿に戻りながら、慌てて近寄る




「ごめんなさい近衛…でもそうだよ…理由があるの?なら教えてよ…」(ぐすぐす

「……あ、ハクリン」


[arca] #ハクリンに気付くと、縋るように胸に顔を押しあてた



ハクリン
(そっと抱き締めながら、『ごめんなさい、近衛』を胸中で反芻する)

「ふぇっ…近衛、怒らせ、ちゃった…」
ハクリン
(泣き止むまでそのまま静かに抱き締める)


[arca] #そのまま眠るまで泣いていた


時系列


2013年正月

解説


年明けの歩。WhiteLineで近衛との会話。お互いに求めあっても認められないすれ違い。

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