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狭間06エピソード集

エピソード『落下物注意~1話『落し物』~』




目次





エピソード『落下物注意~1話『落し物』~』


登場人物



佐藤火星

両腕が義手の少女(大)宇宙人との混雑種。

佐和山伊織

淡い水色の髪の少女(小)を追いかけていた女子。

御所ヶ谷沙良

伊織の仲間。


本文



[utako] #夜、新本町近く



火星

(両親の夜食お弁当を届けた帰り、雨の上がった夜道をバス停に向かってぽつぽつと歩く)

火星

(裏手が山で、雨上がりには土と樹の塗れた良い香りが漂ってくるが、街中の普段とは違う香りもまた好きだ、等と思いつつ、水溜りを傘で突付いて子供っぽい事をしながら楽しんでいる)

火星

「(だけどたまに……、違う香りも漂ってくるのは……何なんだろう)」



[utako] #塗れたビルの壁に視線を向けて、立ち止まる
[utako] #山の麓でも、町でも、感じる異質な香り。学校でも時折先輩達から感じるが、最近はあまり気にしなくなった。



火星

「(そう言う不思議なものもあるって、先輩が言ってたし……そうなんだろうなぁ)」



[utako] #初めは混乱ばかりしていたが、他人の言葉を借りてはいるが火星なりに受け入れた。



火星

(思えば周りに居る友人に感じていた疑問も、そう言う不思議な物だと思えばある程度受け入れることもできたし、受け入れて大きく印象が変わる事もなかった)

火星

「(不思議、不思議……)」



[utako] #少し楽しくなりつつ、サンダルを履いてる事を忘れて水溜りを踏んでしまい、若干後悔する。



火星

「うぅ……、帰って洗わないと……」



[utako] #脚を退けてぱたぱたとその場で足踏みをするが、揺らめく水溜りにチカリと光の線が映り、思わず空を見上げる。
[utako] #夜空にはもう何も残ってはいなかったが、先ほど感じた異質な香り。その元になる何かが通り過ぎて行った事を直感的に理解し、次の瞬間には走りだしていた。



火星

「(見えない。でも、あっちだ……真っ直ぐ飛んで行った)」



[utako] #建物の間を足元もあまり見ずに駆ける。
[utako] #視線の先で、電灯からバチッと火花が散るのが見え、さらにその先、建物の影に隠れる様に動く何かが居たような気がした。



火星

(暗闇に紛れて見えない物に触れたような感覚に、少しだけ胸がときめく)



[utako] #初めて、人形の身体を借りて無いはずの腕で物に触れた時の何とも言えない感覚に似ていて、スカートだと言うのも気にせず全力で走っていた。



火星

「(何だろう……、あれ、何だろう……)」



[utako] #電灯が薄暗くなっているのにも気付かず違う路地へ踏み込んだ時、異質な香りが濃密になった。



火星

「―――」(無意識の内に滑り込む様にブレーキをかけたが、勢いに耐え切れずにサンダルの紐がぶちりと音を立てて千切れてしまう。

火星

「変な所に……入っちゃった……かも」

火星

「……見失っちゃったし、帰ろう、かな」(息を整えながら壊れてしまったサンダルを脱ぎ、追跡のサインを探すがそれらしいものは見当たらない)



[utako] #きっともう少し探せば何かしら感じる事ができるような気もしたが、離れたほうが良いという感覚の方が強く、少し怖くなってきていた。



火星

(傘を少しだけ強く握り締めて、戻ろうと振り返る)



[utako] #頭上でバチリと電光が走り、眩く火星を照らす。



火星

「!?」



[utako] #湿った空気にふわふわとした不思議な電撃の痕が残り、一瞬遅れて背後に何かが落ちてきた。



火星

(高い反射速度を持って、落下音と同時に振り返る)



[utako] #2mほど先に、襤褸切れを纏った淡い水色の髪の少女が倒れていた。



火星

(事態を飲み込めずに少女に近寄り、手を伸ばそうとして気付く)



[utako] #自分と同じような脚、そして腕。少し汚れたその脚に映った、自分の背後の奇妙な仮面。



火星

(息が止まり、同時に動きを止めてしまう)

剣の仮面

(火星に勘付かれた事を察知して、脇のホルスターから凶悪な外観の銃を抜き、迷わず銃口を向けて引き金を引いた)



[utako] #銃声はなく、光の弾丸が飛ぶ。



火星

(何が飛んできたのかは解らないが、少女の脚に銃が映った瞬間、全力で硬化しながら少女を庇う様に防御姿勢を取る)



[utako] #光の弾丸は火星の身体の表面を滑って少女に命中し、また電光を輝かせた。



剣の仮面

「停止確認、閑、回収して。沙良……あんたの結界、効果弱すぎ。次注意」

火星

(眼を丸くしてゆっくりと背後の少女を確認する)



[utako] #少女は静電気を纏う様にパチリと火花を散らせてわずかに痙攣していた。呼吸はしている様子で、生きてはいるが……火星の中でもパチリと火花が散った。



剣の仮面

「……ン?」

火星

「あ、ああああああ―――!!」(傘を振り回して、剣の仮面に突進する

剣の仮面

「ちょっと、待った。あんたさ――」(腕に自信があるのか、片手で傘を止めようとするが……



[utako] #鋼のように硬くなっている傘には火星の重心が乗り



剣の仮面

「私立たn―――」



[utako] #車に轢かれたかのような勢いで奇妙な仮面をつけた女の身体は飛び、勢いよくフェンスにめり込んで止まった。



火星

「はぁ……、はぁ……」

剣の仮面

「……痛い、痛い……なー、超イテーじゃん……、この、半人半機の巨人女……」



[utako] #傘を止め様とした腕は折れている様で、フェンスにめり込んだまま、声だけが響いてくる。



火星

「こ、子供に何してるのさ!! そ、そんなの撃って!」

剣の仮面

「子供だから……何だっつーの……、動き回られてる方が、被害が広がンだよ……引っ込ンでろ! デカブツ!」



[utako] #フェンスに埋まっていた体が消え、ふわふわとした電光を残して火星の懐に現れ、その凶悪な銃を胸にめり込ませた。



火星

(動きが止まってしまう。先ほどは咄嗟に庇うという行動に出れたが、結果的にガードは効果を成さず、そもそもこの銃に対して硬化の意味があるのか、と考えてしまうと……銃口が怖くなってしまった)

剣の仮面

「普通、撃たれたら死ぬじゃん。でも、普通の弾ならアンタには効かないんじゃネーの? ……さっき、銃の前に出れたって事は弾丸を止める自信があったわけっしょ?」



[utako] #奇妙な仮面の女が銃に力を込めると、火星の身体が少し震える。



剣の仮面

「(電撃でも効くかどうか解んないから、わざわざ妖精使って弾曲げたンだけど……こいつ、物理的なもの以外には自信ないみたい……)」

火星

「……ぼ、僕には何も効かないもん! すっごい硬いんだぞ!」

剣の仮面

「あっそう。……でもさー、硬度に関係なく電気流したらどーなるんだろー、この腕に、脚に、電気なんかかなり流れ易そうじゃん?」



[utako] #パチッ、と電気を散らして



火星

「な、流れないもん!」(ぎゅっ、と眼を瞑って

剣の仮面

「(止めてる間に、閑早く回収してくんねーかな……、見失ってる、なんて事……あぁ、ありそう……)」



[utako] #隠れているもう一人の仲間に合図を送って急がせようとしつつ、パチパチと電気を散らして、火星をビビらせている。



剣の仮面

「あのガキんちょは、よく電気通ったんだケド? ……アンタも一緒なら、解るっしょ」

火星

「……、一緒」



[utako] #横目に倒れている少女を見て、少しずつ銃を押しのける様に深呼吸し



火星

「(一緒の、脚……腕は……僕にはなかったけど、僕にも腕があったら、きっと……あんな感じで、でも、普通の人みたいな腕や脚が、やっぱり良くて……)」

火星

「(僕は、僕と一緒のあの子を……)」



[utako] #ぎゅっとまた強く眼を閉じて、息を止め



火星

「(守るんだ!!)」



[utako] #眼を閉じたまま、頭突きをかました



剣の仮面

(手中におさめた気でいたせいか、思い切り頭突きを食らって仮面が割れる)

伊織

「こ、ン……の!?」



[utako] #後ろに大きく仰け反りながら、引き金を引く。



伊織

「(阿光の部員に悪い、ケド……もう加減しない! コイツも、潰す!)」



[utako] #やはり射出されるのは実弾ではなく光の弾丸だが、少女を停止させている物と同じ物を3発、続けて撃ち込んだ。



火星

(頭突きをした後、銃はやっぱり怖いので薄く眼を開けて胸元をガードしようと急ぐが、銃口はめり込んだまま)

火星

「フンッ!」



[utako] #大きく胸を張って、銃口を離した。



火星

「(撃たれても、平気、だもん!)」



[utako] #離れた銃口の隙間に手を入れ、3発の光の弾丸を受け止めるが、エネルギー弾である光の弾に実体はなく妖精が操っているため、初めにガードした時と同じように、手をすり抜ける様にして火星の身体に直撃した。



火星

(一発目に身体が跳ね、素直に痛いと言う感覚に驚いたが、二発目と三発目は、無意識に掴んで機動を逸らした)

伊織

「……はぁッ!?」

火星

「ひぃッ!? いだだだだ、ったい! しびしびする!!」



[utako] #服には黒い焦げが残り、胸元を押さえて地団太を踏んでいる。



伊織

「(妖精が、捕まった? 何で? ……こいつ、防御特化じゃなかった……のか?)」

火星

「うぅ……、痛いよぉ……(胸を抑えてしおしおとヘタれそうになるが、ハッとして) じゃなくて!! あの子は、僕と一緒だから! 僕が……えっと、ま、守るんです! 逃げます!」



[utako] #よろよろと歩いて少女を抱え



火星

「うー! うー!」



[utako] #威嚇しているのか何なのかよく解らない声を出しながら、人通りのあるほうへと逃げて行った。



伊織

「……、はぁ」



[utako] #痛む額を抑えて大の字になって転がり



沙良

「……逃げたね。追う?」

伊織

「……パス。ダリー、超ダリー」

沙良

「あまり耐性の高いほうじゃなさそうだから、逃げた所で……結局家には戻るか」

伊織

「……そーゆー事、あー……あーゆーのは私じゃなくて沙良向け。次は私行かねーから、ぜってー行かねーから!」

沙良

「観てて解ったよ。君の電撃もあまり意味をなさない様だし」

伊織

「……超ムカつくわ」

沙良

「今更傷の心配はしないけど、大丈夫?」

伊織

「これくらい、何でもねーっつーの」



[utako] #ふわりとまた姿が消える。
[utako] #構成を分解し、再構成。疲弊はあるが、それで骨折も傷も外見上は治ってしまう。



伊織

(服の汚れさえ無くして、青に近い黒髪を下ろし)「絶対防御の弱点って、知ってる?」

沙良

「弱点が無いから絶対なんだろうけど、それが絶対でないなら……そうだね。弱点なんて沢山あると思うよ」

伊織

「卑怯な応え」

沙良

「僕は競技者じゃないから」(優しい微笑を浮かべて

伊織

「……やっぱ私がやるわ」

沙良

「三城岳さんには任せないのかい?」

伊織

「ミシロダケ? 何そのキノコみてーな名前。しらないニャー」

沙良

「……君が急ぎ過ぎて追いてくのが悪いと思うんだけどなぁ」

伊織

「RBにカーナビつけろっつーの……」

沙良

「コンビネーションは大切だと、君から教わった気がするよ」

伊織

「知るか! ……迎えに行って、ファミレス行こう。ファミレス。反省会と軍事法廷会議ー」

沙良

(やれやれ、とため息をついて)



[utako] #結界を解き、二人も姿を消す。


時系列


2013年、梅雨の話

解説


お使いの帰りに異変に遭遇する佐藤火星

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