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狭間06エピソード集

エピソード『その薬、牙が生える妙薬につき厳重注意』




目次





エピソード『その薬、牙が生える妙薬につき厳重注意』


登場人物



無戸室近衛

魔術の適正は低い。

無戸室ロザリンデ花梨

吸血鬼のお姫様

カウラアード・シルフィ・ルートスペード

紋章魔術師


本文



[utako] #夏休みの終わりに向かってカウントダウンが始まったとある日。
[utako] #フィネストラ吹利403号室、リビング
[utako] #小さなホワイトボードにところ狭しとかかれた紋章魔術の基礎講座を前に、近衛が頭を抱えて唸っていた。



近衛

「何かしらのその、才能? がねぇとできねぇんだろそれ。そうじゃなくて、才能がなくても出来るとか、代替があればできるとか……ってのは」

カウラ

「私の弟子のように魔術と異能をニコイチする事で使うことも出来るとは思うわよ。それも魔術を扱う適正があれば、の話なのだけれど」

近衛

「……それで俺の適正は」

カウラ

「解らないから今、教えてるんでしょ。教えて出来れば適性有り、出来なければ適性無し」(教鞭をピシッと向けて

近衛

「……覚えるのが無駄とまでは言わねぇが、こればかりは……覚える事が多過ぎる気がすんだがなぁ」

カウラ

「中学2年生で出来るようになる子も居るのだから、それぐらい覚えなさいよ」



[utako] #紙にさらさらと口と骨の紋章を描いて、パッと近衛に見せる。



近衛

(どたん、と机に突っ伏すと、ぐるぐると腹が鳴り出した)

カウラ

「これぐらいの術式ならすごく簡単よ。耐性もないのだから、見ながら耐性もつけなさい」

近衛

「……腹が、減って……力が……」

カウラ

「我慢しなさいよ。ほら、その苦痛の先に新たな光があるのよ。鉛筆持って、背筋を伸ばしなさい」



[utako] #つんつんと教鞭で突付く、スパルタ式
[utako] #勉強を教えるのは得意だが、魔術を才能による感覚や直感で理解するカウラは人に教えるには向いてなかった。



カウラ

「自分に試せない魔術は基本的に行わない、と言う教訓も込めてなのだけれど、耐性がなさすぎると勉強にもならないわね……」



[utako] #仕方ないわね、と布テープに紋章を描き込み、ぺたりと近衛のおでこに貼った。



近衛

「お……、腹の空きが収まってきたな。耐性がつくようなのを描いてくれたわけか。」

カウラ

「……まぁ、そんな所かしら」



[utako] #おでこに貼られたテープに描かれてるのは、空腹を感じなくなる、苦痛を減らすという類のものだったが、近衛が見ているのは空腹を感じる術ではなく、しゃべる度に体力を奪っていくというものだった為、特に耐性ではない。



近衛

「おおぉ、鉛筆が進むぞ! 元気になったような気がする! これは、あれか、日ごろのお父さんの疲れを取ってあげるわ、的なツンデレ要素も含まれてる術か、な、に、ふぁ―――」



[utako] #元気に喋り捲ってぶっ倒れた。



カウラ

「……耐性以前に魔術との向き合い方について教えるべきだったかしら。」



[utako] #ペリッとテープを剥がして破り、教習用に描いた紋章も破って捨てる。



カウラ

「術にかけられたとき、自分がどういう術にかかっているのかをまず考えなさいよ。……って聞いてないわよね」



[utako] #講義終了と教鞭とホワイトボードを片付け、せめて頭の下にクッションを転がしてやってから、机の上に薬と水を置いておく。



カウラ

「起きたら飲んでおきなさいよ、と……さて遊びに入って来ようかしら」



[utako] #勉強の時間も終わり、10時になると外に遊びに行く夏休みのお子さん。


インスタントヴァンパイア近衛



近衛

(けだるかったのでカウラからもらった薬を飲んだら、口の中がちくちくしてきた)

ローザ

「? どうしました、近衛さんん」

近衛

「口内炎ができちまったのかもしれねぇさな……、ちょっと見てくれ」(と、口を開け

ローザ

(覗きこむ)

近衛

(側切歯と犬歯が尖ってきてる。側切歯の方はやや短く、犬歯は長い、上下8本の牙)

ローザ

「ん……んん?」(つんつん)

近衛

「……虫歯だったか?」

ローザ

「え、いえ……え? 浮気ですか?」

近衛

「……浮気はしてねぇぞ。浮気は」



[utako] #たじたじ



ローザ

「でも、これは、どう見ても、きゅ、吸血鬼化してますわよね……」(ほろほろと涙がこぼれる

近衛

(驚きながら口の中に指を入れて確認し……)「生えてんな、これ……いや、待て待て、俺は噛まれてもねぇ……起きるまでは普通だったわけだから……」

ローザ

「い、いやですわ、わたくし、ショックで……」(涙止まらない

近衛

(頭を抱きかかえるようにして、その場に押し倒し) 「こりゃ、カウラの薬のせいだ……一時的に吸血鬼化するっていう。多分、あれだ……だから、大丈夫だ」

ローザ

「ひっく、わ、分かってるんですけど、思った以上に衝撃が」

近衛

(涙を拭って強く抱きながら)「解るさな……、俺はローザを愛している。ほかの吸血鬼に浮気したわけじゃねぇからな」

ローザ

(肩を震わせてる)

近衛

(パキりと牙の先を折ってから、ローザを抱えてソファーに行き、膝の上に座らせて落ち着くまで頭を撫でている)

ローザ

(しばらくすると段々落ち着いて来る)「み、みっともない所を見せましたわ」

近衛

「ローザにとって吸血鬼ってのはそれだけ特別なんだ……、みっともない事なんてねぇさ」(顔を寄せて目尻の涙のキスをしながら、頬を撫で)

ローザ

「それにしても取り乱し過ぎですわ」



[TK-Leana_sleep] # ハァっとため息



近衛

「それだけ想い入れが強いって事だ」

ローザ

「カウラさんの薬ですか。話には聞いてましたけど、本当に吸血鬼になるんですね」

近衛

「あぁ。とは言っても、あんまり実感も……」(口元を抑えて、舌で口の中を探ってから顔を顰める



[utako] #折ったはずの牙の先がもう治ってた。



ローザ

「?」

近衛

「いや……、吸血鬼なんだな、と少し実感しただけだ」

ローザ

「カウラさんには、薬の扱いを気をつけるよう言い聞かせなければなりませんわね」

近衛

「そうだな。こう妙な使われ方されると……もしも次があったら心臓に悪ぃ」

ローザ

「全くですわ」

近衛

(そうだなぁ、と子供のように撫でながら抱えっぱなし)

ローザ

「……あの、近衛さん?」

近衛

「どうした?」

ローザ

「いつまでもこのままというのは、その、恥ずかしいのですが」

近衛

「落ち着いたならもう……離しても良いんだが、ああも泣いてるローザを見た後だとな……もう少し俺の膝の上に居て欲しい」

ローザ

「もう……」



[TK-Leana] # 居心地悪そうにちょこんと座っている



近衛

(とは言ったものの実はローザが落ち着いた辺りから、無性に素肌に目が行き、頭の奥が熱くなってきてるので、離すに離せなくなってしまっていた)

近衛

「(さっきから妙に鼻も耳も効いちまうし、感覚が鋭いとは聞いちゃいたが……、触感は一倍酷いな)」

ローザ

「近衛さん?」

近衛

(唇の動きに目を捕らわれて、慌てて目頭を押さえる)「……慣れてねぇ感覚だと、少し、くらくらするな」

ローザ

「ああ。動体視力なんかとても向上するらしいですわね」

近衛

「なるほどな、小視に少し似てる様な気もするが……こりゃ次第に落ち着くもんなのか」(軽く目を擦って瞬きすると、左目は何かの力がついたのか紫色の光が僅かに灯っている)

ローザ

「まあ、慣れの問題ですわ。変化したての方は、身体能力の差異についていけず転んだりコップを握りつぶしたりなんて言う事もよくあるようです」

近衛

「それは……ちょいと怖いな。さっきから力入れすぎちまってねぇか?」

ローザ

「わたくしも吸血鬼ですわよ。思い切り抱きしめられても潰れるような事はありませんわ」(コロコロ笑う

近衛

「それもそうか……」(無邪気に笑う姿を見て、にかりと笑うが……徐々に頭の奥の熱も強くなり、よいせ、とローザを膝から下ろして口元をまた抑える)

ローザ

「……あ」

近衛

「……気づいたか?」

ローザ

「ふふ」(しなだれかかる

近衛

「う……、ぐぅ……」(唸り声のような声を捻り出しながら、変な汗かいてきた)

ローザ

「どうしましたか、近衛さん?」

近衛

「……一応、同種じゃねぇ吸血鬼だと噛むのはマナー違反じゃねぇものかと、気にしてるんだが……」

ローザ

「そう思います?」

近衛

「同種でもどうかと思ったりするんだが……、小難しく考えて誤魔化そうとしてたな」



[utako] #長く息を吐いて口元から手を外して



近衛

「……こう言う時、キスをするような感覚で迫るのかは正直解らねぇが……噛んで良いか?」

ローザ

「ふふ……ダメです」

近衛

(ガーン! とショックを受けつつ、肩を捕まえて)「……、一口良いか? ローザ」

ローザ

「いけません」(にっこり

近衛

「ぐ……ぐぅ……」(項垂れて、しくしくと手近にあったクッションを齧る)

ローザ

「近衛さんとの初めては、ローテンフェルトで婚礼の儀を挙げた後と決めているのです。わたくしも興味がないではありませんが、だからこそ我慢してもらいますわ」

近衛

「一理あるさな。いや、そうしたほうが良い……」



[utako] #しくしくとクッションを齧っていると、ぴょこんと犬のような耳が生え、同じく犬の尻尾と小さな蝙蝠の羽根まで生えてきた。



ローザ

「何か変化が進んでますわよ、近衛さん」

近衛

「行き場のない衝動のせいだ……」

ローザ

「我慢してください」(にっこり

近衛

(羽は引っ込めるが、恨めしそうにローザを見ていたが、ハッと思いつく)

近衛

「涙って確か、血液からできるんだよな……」

ローザ

「変態的な事を考えないでください」

近衛

「君が泣くまでやめないってジョナサンも言ってたから倣おうと思ったんだが……」

ローザ

「あら、殴り合いをお望みですか」

近衛

「ド突き合いじゃ先に泣かされるだろ、俺が。……方法は別だ。勝負してみるかい?」

ローザ

「挑まれたなら受けて立たない訳にはいきませんわ」

近衛

(勝利を確信したようにガッツポーズして、クッションを放って、ローザの手をとる)「……それでこそ、ローザさな」



[utako] #その後、WhiteLineに飛んで勝負は開始されたが、泣いても勝負は続いたらしい。


時系列


2013年8月の終わり頃

解説


カウラに魔術を習っていた近衛。回復薬に渡された薬でまさかあんな事になるとは…

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とにかく、元気いっぱい!ぶらりんぱわーではぴはぴ! 常識的な子は少ないけど、それでもあまり修正しないところがはぴはぴ!Paとジト目担はこちらです
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