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霞ヶ池の闇エピソード集

エピソード『柚子とゆとり様』


目次


エピソード『柚子とゆとり様』

登場人物

ゆとり様
神。女子高生とか守ったりする。
小牧柚子
霊媒の大家。家の事情で生死の事について色々考える。

本文

柚子
(死は最初からそこにいる……難しいな。死んだ後のせかいのことなら僕はわかる。でも死がなんなのか、生と死の境界で、その瞬間に何が起きるのか、僕は何もしらない)

[Toyolina] #夕暮れの図書館でぱたんと哲学書を閉じ、窓際に立つ

柚子
(七竈さんもアリシアもそれから僕を遠ざけてる。能登さんは……勝手に死んでるけど例外ぽい)

[Toyolina] #廊下を静かに歩いて校舎端の部室に向かう

柚子
「お姉さまなら教えてもらえるんじゃないか、僕はそう思ってるんですけど……」
ゆとり様
「どうしてそう思うの?」
柚子
「えっ、だって、お姉さま、人間じゃないじゃないですか?」
ゆとり様
「なんだ、ばれてたの?」
柚子
「最初はわからなかったけど、僕は優秀ですから」

[Toyolina] #幸子

柚子
「僕に収まるかわからないくらいの大きくて重い存在……気付いたときはびっくりしました。なんで毎日学校でお茶飲んでるんだろうって」
ゆとり様
「知りたい? 私には知りたい理由がわからないんだけど……」
柚子
「知りたいから、こうやってお姉さまにお願いにきました。死っていう現象……僕は知りたい。知らなくちゃいけないんです。理由、理由は……そうしないと、僕が殺されるから。これじゃ理由になりませんか?」
ゆとり様
「誰が殺しに来るのかも知りたいところね。でも、教えてあげるとは限らないけど」

[Toyolina] #まあお座りなさいと座布団を勧めるゆとり様

ゆとり様
「まず、死なれるのは困るっていうか、とても悲しいわ。名前、似てるから気に入ってるの。あなたのこと」
柚子
「ゆ、しか合って無くないですか」
ゆとり様
「十分じゃない? 漢字だと一文字同じだし」
柚子
「気に入ってもらえてるのは嬉しいですけど」
柚子
「ほっといたら僕殺されるんですから、気に入ってるんだったら助けてくれてもよくないですか?」
ゆとり様
「殺される、の意味がよくわからないんだけど……誰に殺されるの?」
柚子
「……どういったらいいのか……僕はお姉さまと同じで、存在そのものがオカルトなので……わかりやすくいうと、あちら側……?」
ゆとり様
「代々伝わる霊媒の名家なのに? 何も対策がないの?」
柚子
「本人が対策を身につけるしかないんです。僕自身が。お兄様もお父様もおじいさまもそうしてきた。だから僕もそれにならって……」
ゆとり様
「一度死ぬとか、そういう意味合いなのかな」
柚子
「死って怖いものでしたか?」
ゆとり様
「? 普通は誰でも怖いんじゃないかな」
柚子
「僕もそうなんだろうなって思います。何があるのか、わからないから……」
柚子
「でも、僕は……何があるのか、どうなってるのか知ってるから、怖くない。だから、別のことが怖い。知るなら全部知らないと……間違えたときに殺されてしまう」

[Toyolina] #だいぶぬるくなったお茶を口に含んだ

ゆとり様
「優秀っていうだけあるね」
ゆとり様
「でも、それを聞いて、ますます私は教えてあげるわけにはいかなくなった」
柚子
「どうして、ですか」
ゆとり様
「……私が何なのか、わかっているなら、察しているんじゃないの? 私みたいな存在は、是か非のどちらかしかないの」
ゆとり様
「手加減するとかすごく苦手っていうか、無理」
柚子
(こくり)「……すごく今、納得しました……僕を一瞬で完璧に殺してしまえる」
ゆとり様
「今はこんなおしとやかなお嬢様だけど、元々がね」
柚子
「……別の手を考えます」
ゆとり様
「それ以外のことだったら、何でも力になるけどね」
柚子
「いえ、僕はもっと深く考えて……慎重にならないといけないって」
ゆとり様
「……まじめねえ……」
柚子
「そうでもないですよ僕」

時系列

2013年1月

解説

死ぬってどういう事なのか、ゆとり様に尋ねる柚子。それだけ言えば実に十代の悩みだが、オカルトな家の事情である。
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