狭間06エピソード集

エピソード『歩の怪異探訪③』

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目次

• エピソード『歩の怪異探訪③』
  • 登場人物
  • 本文
  • 解説

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エピソード『歩の怪異探訪③』

登場人物

緋昏歩

モノノケ商店街で『アネモネラウンジ』という喫茶店を営む女性。店の営業の合間に怪異を探し、記録する『記録屋』。

福田鯉

道で見かけた少年。本好きらしい

本文

[arca] ＃夏の逢魔時
[arca] ＃軒に吊るされた風鈴の音が何処からともなく聞こえてくる

歩

「この時間帯になるとやっぱり涼しいわ」

鯉

「あの、近くに本屋さんありませんか?」(道迷い

歩

「え？本屋ですか……」（冷静にんーと考える

鯉

「あれ、このあたりの方じゃなかったですか」

歩

「ええ、少し離れてますけど。あ、あっちの通りに古本屋がありますよ」

[arca] ＃おもいだしたように

鯉

「もしよかったら、案内してはいただけませんか?」

歩

「ええ、構いませんよ」（微笑み

鯉

「あ、ありがとうございます……」(微笑みにドキッとしつつ

歩

（ゆっくり歩きだし）「何かお目当ての本でも？」

鯉

「目当ての本は特にないんですけど、面白いとか珍しいとかそんな本がないか、休みの日に探してるんです」

歩

「そうなんですか。本が好きなんですね」

鯉

「不思議な本とか、ご存知ですか?」

歩

「んー、不思議な本ねー……飛び出す絵本みたいなのかしら？」

鯉

「いや、そんな大層な物じゃなくていいんですよ。あんまりメジャーじゃないけど実は面白い、程度で。いろんな本を読みたいから、人と出会ったらいつも聞くんです。『面白い本知りませんか』って」

歩

「なるほどね……。そうね、幾つかあるわよ」

鯉

「是非、教えてくださいっ!」(目を輝かせる

歩

「そんなに掘り出し物ってものでもないし、今から行く所にもあると思いますよ」

[arca] ＃微笑みながら

鯉

「いやぁ、楽しみです」（るんるん

歩

「……（本当に本が好きなんだ」（クスリとしつつ古本屋へ進む

[arca] ＃そのまま古本屋へ行く？
[koi-chan] ＃周りに何かありますか?
[arca] ＃特にないけど、ロケーションは商店街と住宅街の中間のような場所と想像
[koi-chan] ＃多分性格的に今は本しか頭の中にないので、古本屋を出た後に商店街を案内してもらう、というのでいかがでしょうか。
[arca] ＃あい
[arca] ＃では古本屋に移動

歩

「つきましたよ」

[arca] ＃ガラス引戸の古風な古書店

鯉

「おぉ～っ、じゃましますー」(興奮を慌てて落ち着かせる

歩

「うふふ」

鯉

(ちょっと赤面)

鯉

「すごい、いろいろあるなぁ」

歩

「そりゃ、古本屋さんだもの……あ、これよ」

[arca] ＃『天文學と人生』と言うタイトルの、かなり古い本

鯉

「なかなかいい装丁ですね、この本」(受け取ってパラパラめくる

[arca] ＃発行大正１３年
[arca] ＃SF的な脱線を展開する妙な科学本

歩

「それ、初版みたいね。安いのはないのかしら……」

鯉

「うわあほんとだ、こんな古い本の初版に会えるなんて」(またちょっとはしゃぎかける

[arca] ＃5000円くらい

歩

「そう？初版とかに興味がないから……そう言うのってやっぱり嬉しいものなんですね」

鯉

「嬉しいですよー、本って、読んで楽しむための実用品ですけど、読み終わったら並べてみるものですし。やっぱり、歴史が違うじゃないですか。自分より長く生きてるって感じしますし」

[koi-chan] ＃コレクターの部分にも火がついた

歩

「な、なるほどね……。本当に本が好きなんですね」

鯉

「はい!　でも5000円は高い、というかちょっと痛くて。でも夏休みだしバイト多く入れればなんとかなるかも」(財布と相談

歩

「そうよね、新書でもその値段のものはなかなかないし」（うふふ

店のジジイ

「zzz」

鯉

「よし、今日の記念だ。買っちゃえっ、というわけで、お金払ってくるのでちょっと待っていてもらえますか」

[koi-chan] ＃奥のレジに歩いていく。

歩

「？……ええ（あれ、私って待つ理由あるのかしら」

鯉

「あの、すみません。……あの、すみません?　ただでもらってっちゃいますよ」(ねている肩を揺らしつつ

店のジジイ

「んご……あ？……おぉ……えーと……さんじぇん円じゃ」

鯉

「……えと。あれ?　3000円でいいんですか?」

店のジジイ

「ん？……おぉ。じゃあごしぇん円じゃ」

鯉

「じゃあって……どっちですか」

店のジジイ

「ごしぇん円じゃ」（ゲス顔

鯉

「さっきは1500円とおっしゃいましたよね」(試しに値切り交渉

店のジジイ

「ごしぇん円じゃ」（ゲス顔

鯉

「今、僕はいくらといったでしょう?」

店のジジイ

「ごしぇん円じゃ」（ゲス顔

鯉

「しょうがない、ハイ、5000円」(人を待たせているのであきらめた

店のジジイ

「まいどあり。包むかえ？」

鯉

「紙袋でお願いします」

店のジジイ

「あいよ」（0.5秒で梱包

鯉

「お世話様です」(レシートと本を受け取る

店のジジイ

「あいー」

[koi-chan] ＃会釈してから歩さんのところまで戻る

歩

「うふふ。得し損ねちゃいましたね」

鯉

「そうですね」(仏頂面を作るが、本を手に入れたのですぐににやけだす

鯉

「お待たせしました」

歩

「いえ。じゃあ、出ますか？」

鯉

「はい。待っていてくれてありがとうございます。……よく考えたら、待っていてもらう義理なんてなかったんですよね。すみません」

歩

「成り行きですし」（微笑む

鯉

「(ぁぅ……)」（ちょっとどぎまぎ

歩

「どうしますか？他に何かなければ、ここでお別れということで……」

鯉

「せっかくなので、お礼にコーヒーでも」

歩

「まあ……大丈夫ですか？」

[arca] ＃５０００円も出した後で

鯉

「さっき確認したら、まだ大丈夫でした」

[koi-chan] ＃後文庫本2冊くらいなら買える

歩

「そう？……（まあ、お茶くらいなら大丈夫かな……）。分りました、お付き合いします」

鯉

「ありがとうございます」（一番近い喫茶店に入る

歩

（おっぱいがテーブルに乗ってしまうので少し離れて座る

鯉

「お好きなものを頼んでください」(ペーパーホルダにささっていたメニューを差し出す

歩

「ええ……それじゃ、アイスコーヒーを」

鯉

「(お店の人に注文)すみません。……アイスコーヒーとカフェオレをお願いします」

歩

「……（年下の男の子におごってもらう日が来るなんて思わなかったなー」

[koi-chan] ＃自己紹介とかします?
[arca] ＃そうですね

鯉

「申し遅れました、福田鯉と言います。改めて、今日はありがとうございました」

歩

「いえ……。私は、緋昏歩です」

鯉

「普段は何をしていらっしゃるのですか?」

[koi-chan] ＃散歩だったのかな、と予想している

歩

「喫茶店をやってます」（少し微笑み

鯉

「(ドキッ)……ここ、商売敵でした?　(喫茶店をやっている人を喫茶店に誘ってしまったーっ)」

歩

「うふふ、地域的にお客さんが被ることはないと思うわ」

鯉

「ならよかったです。うわ、普段から美味しいコーヒー飲み慣れているかたを……」

歩

「うちは珈琲より紅茶がメインだから、珈琲は逆に新鮮です」

[arca] ＃実際はそんな事もないがフォロー

鯉

「今度伺ってもいいですか?　いやその、そうこの本の感想を言いに」

歩

「まあ……勧めた人に感想だなんて、律儀なんですね」（うふふ

鯉

「いろいろな方と知り合えるなんて、そうそうないことじゃないですか」

歩

「最近の子は草食系が多いって聞くけど、そうでもないのね」（うふふ

歩

「構いませんよ、隣町の六結商店街（モノノケ商店街）。通りの中程のアネモネラウンジというお店です」

歩

「斜向いに、分りやすいペットショップがありますからスグ分ると思います」

鯉

「どうでしょう、本以外は何でもない普通の高校生ですよ。アネモネラウンジ、覚えました」

鯉

「僕はちょっと離れた商店街にあるひらさか書店、っていう本屋でバイトしてます。店長には変って言われるんですけど、独創的な展示しているのでいつか近くまでいらっしゃることがあれば、お待ちしています」(さりげなく営業

歩

「それだけ情熱があるんだったら、”だけ”で済ますのはもったいですよ。ひらさか書店ね、覚えたわ」

[arca] ＃微笑みつつ、古びたメモ帳を取り出しカリカリ

鯉

「そういってもらえると嬉しいです。……ずいぶん、使い込まれたメモ帳ですね?」

歩

「ええ……こう言うのにも興味があるのかしら？」

[arca] ＃霊感があればただならぬ逸品であることを感じる

鯉

「何か曰くがあるのですか?」(単なる古くなった帳面にしか見えない

歩

「ええ、『先代』から受け継いだとても古い手帳なの。中身は秘密だけどね」（うふふと微笑み

鯉

「秘密ですかぁ、なら仕方ないな」(歴史のありそうな“本”の気配に興味を持っていた

歩

「ふふ……ひらさか書店って言っていたけど、もしかしてあの変わった本屋かしら」

鯉

「変わった?　うちの店にはゲームコーナーがあるくらいですよ」

歩

「やっぱり。気を悪くしたらごめんなさい……その手の人達からはむしろ、『ゲームセンター』だってもっぱらのウワサよ」（うふふ

鯉

「ゲーム目当てのお客さんが多いのは事実ですねぇ。アドレナリンでてる時に売り込むと攻略本かってくれるんで、ありがたいです」

歩

「けっこう商売上手なのね」

鯉

「それほどでも～(照)。喫茶店でも、紅茶のでてくるミステリとかおいたら売れるかもしれませんよ?　最近その手の、流行ってるんです」

歩

「まあ、そうなの。でも、うちは趣味みたいなものだから……買ってもらうよりは、その場で読んでもらう方が良いかしら」

鯉

「今度伺うときに、1冊お持ちしますね」

歩

「ええ、是非。期待してます」（微笑み

鯉

「分かりました。……もう結構遅くなっちゃったな。まだここにいらっしゃいますか?」

歩

「もう珈琲も少ないし、鯉君が出るなら私も出ようかしら」

鯉

「そうしますか。お話、楽しかったです」

歩

「私もよ」（微笑み

鯉

「(ドキッ)では、読み終わったら」

歩

「ええ」（再び微笑み、ゆっくりと立ち上がる

鯉

「(本をわきに挟んで立ちあがる)忘れ物は……なさそうですね。お先にどうぞ」(伝票を持つ

歩

「ありがとう」（ふわりと軽くしなやかな身のこなし

鯉

「(にしても、綺麗な人だな)お会計お願いします―」

[koi-chan] ＃お金払って店を出る

歩

（夜空を見上げていたが、鯉が出てきたのに気付くと振り返り

歩

「ごちそうさま。私はこっちなの」

[arca] ＃己の帰路の方向を指差し

鯉

「僕とは反対ですね」

歩

「そっか。じゃ、ここでお別れね」

鯉

「ですね。(名残惜しそうに)では、また」

歩

「ええ、またね」（微笑んで小さく手を振る

鯉

「ありがとうございました、失礼します」(ふりかえす

[koi-chan] ＃一礼する

歩

（見送りの体勢

鯉

(街路灯の下、自分の家の方へ歩き出す)

[koi-chan] ＃時々振り返る

歩

「ふふ……（律儀な子ね」（鯉が振り返ると手を振る

鯉

(照れ笑いながら最後に大きく手を振り、角をまがった)

歩

「初心な感じね……」（姿が見えなくなると自分も帰路につく

[arca] ＃手帳を取り出し、今日の出会いを書き記す

歩

「なんとか隠し通せたけど、やっぱり男の人はちょっと怖いわ……」

[arca] ＃そんな事をつぶやきつつ帰宅
[arca] ＃そっちでなにかやりますか？
[koi-chan] ＃とくにはないですね。今頃るんるんしながら家路を急いでます。
[arca] ＃じゃあ締め

解説

日暮れ時、怪異を探して歩いていたら、やたら本が好きな迷子の高校生と出くわした。

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