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目次


 

登場人物


緋昏歩(ひぐれ・あるく)
モノノケ商店街で『アネモネラウンジ』という喫茶店を営む女性。店の営業の合間に怪異を探し、記録する『記録屋』。
男児
通りで歩が出会った男児。名前や正体は不明。

本文


[arca] ---

[arca] #とあるビルディングの屋上。
[arca] #日が暮れ、遠目に茜色に染まった頃。
[arca] #人気はないが、眼下にはネオンと乗用車のヘッドランプの流れが望める。

    歩:「んー…。」

[arca] #そのビルの上から周りの様子を見回す。
[arca] #言ったん手すり近くで見回したが、すぐに軽やかに跳躍して給水塔の上に立つ。
[arca] #そしてまた辺りを見回した。

    歩:「ん、あの辺りがにおうわね。」

[arca] #区々に光の灯る市街地の一角に眼を留め、僅か笑みをこぼす。

    歩:「どんな怪異が起きているのかしら。」

[arca] #ゆっくりと立ち上がり、ふわりと給水塔から降りる。
[arca] #しかし、その身体は屋上のユカにたどり着く前にふっと消えた。
[arca] #辺りには街の遠い響きだけが残る。

[arca] ---

[arca] #市街地の一角。

     SE: シュンッ

[arca] #建物の影に歩の姿が現れる。
[arca] #一歩出ると人の往来が有るが、その暗がりには誰もみ向きしていなかった。

    歩:「これからこの辺りで何か起きる感じがするわ…もう少し様子見よっと。」

[arca] #壁に寄りかかり、街路の往来を眺め始めた。
[arca] #しばらく待つと、街路に古風な服装を身に纏った男児が現れた。
[arca] #背中に何やら大きな荷物を背負っている。

    歩:「なにかしら…パイプ椅子?」
    男児:(シャッターの下りたテナントの辺りで立ち止まり、きょろきょろと様子を伺っている。」
    男児:(軽く頷き、背中の荷物を降ろし始めた
    歩:「出店でも出すのかしら。」

[arca] #パイプ椅子を展開し、折りたたみ式の机も展開する。
[arca] #男児はその上に白い布を被せ、水晶玉を飾った。

    歩:「なるほど…占い師なのね。」
    男児:(一通りの段取りを整えると、パイプ椅子にちょこんと座った

[arca] #そして懐から立て札を取り出し、机に立てた。
[arca] 立て札:「ネイルアート。指一本200円。」

    歩:「えっ!?」

[arca] #歩の表情が一瞬氷る。

    歩:「ネイルアート…じゃああの水晶玉は一体…。」

[arca] #困惑の表情。

    歩:「ま、まあ飾り…なのかしら。」

[arca] #風貌や印象はどう見ても易者風であるが、立て札を立てた後メイク道具の入った小箱を取り出し始めた辺り、本当にネイルアートの出店なのだろう。

    歩:「ふう…どちらにしてもあの幼い身でで出店を開くなんて、変わってるわ。」
    歩:「何か事情があるのかしら?もう少し様子を見ましょう。」

[arca] #帰宅途中のOLやJKが一瞬立て札に興味を示すが、男児の姿を見るや訝しげになり足を止めることはない。

    歩:「なかなか立ち止まる気配はないわね。私だったら思わず立ち止まっちゃうのに。」
    男児:「…。」

[arca] #呼び込みをする気配はなく、グッと口を結び礼儀正しく座っている。

    JKイ:「ん?なにあれ、ちょーうけるんだけどw。」
    JKロ:「え?なになに?」

[arca] #程なくして、JKのグループが男児の出店に気付き立ち止まった。

    JKイ:「ネイルだってさwて言うかこのガラス玉なに?綺麗なんですけど。」
    JKハ:「ほんとだーw。」
    男児:「…いかがですか。」

[arca] #締まった顔のまま小さく。

    JKイ:「一本200円だってさ。」
    JKロ:「安くない?うちが行ってるとこ4000円とられるんですけど。」
    JKハ:「マジ?まあうちもそんなもんだけど。ぼくー、見本とかない?」
    JKロ:「て言うかほんとにネイルできんの?」
    歩:「確かに…。」
    男児:「見本ですか…今自分にしてあるものでしたら。」

[arca] #男児がスッと両腕を机の上に晒した。

    JKイ:「えっなにこれは。」
    JKロ:「なにこれ?きもーい!」
    JKハ:「不気味だわ…やめよやめよ。」

[arca] #なんかドン引きして去っていくJK一同

    歩:「どうしたのかしら…。」
    男児:「……。」(逃げていくJK達をしばらく見送り、また客待ちをしている
    歩:「気になるわね…。」

[arca] #なにを見てJK立ちが引いたのかが気になり、建物の影から出ていく。

    歩:「こんばんは。」
    男児:「…いらっしゃいませ。」

[arca] #そして男児の出店の前へ。

    歩:「ネイルアートか…どんな感じのが得意なの?」
    男児:「はい。見本は…自分でしているものでしたら。」

[arca] #膝の上においていたであろう両手を机の上に晒す
[arca] #すると、男児の両手の爪にはびっしりと梵字が墨で書かれていた。

    歩:(ビクっ
    男児:「…どうでしょう。」
    歩:「これは…あの子達が気味悪がるのも分るわ…。」

[arca] #一昔前に、米粒に文字を書くペンのCMがあった。まさにそんな感じの文字がびっしりと詰まっている。なんとも言えない生理的な不気味さだった。

    男児:「…見ていたんですか?」
    歩:「え?あぁ…通りすがりにね。ちょっと気になっていたから。」
    男児:「そうですか…それもそうですね。こんな年頃の子供が出店で、しかもネイルアートだなんて。」
    歩:「あはは…(自覚はあるのね。」
    男児:「さっきの人達やあなたの反応を見ると…これはあんまり受けが良くないみたいです。」

[arca] #男児は自分の爪を見つつ俯いた。

    歩:「そうね…正直、ちょっと不気味かな。」(微笑みつつ
    男児:「そうですか…最近の流行を取り入れた良いアイディアだと思ったんだけどな。」
    歩:「良いアイディア?」
    男児:「はい。実は僕、本業は護符屋なんです。」
    歩:「護符屋?…お守りとか売ってるの?」
    男児:「はい。元々は易者をしながら、その人に合った護符をその場で書いていたんです。」
    男児:「でも、最近売り上げが少なくなってきて…。」
    歩:「ははぁ、それでネイルアート。」
    男児:「はい、流行のネイルアートをヒントに、符の替わりに爪に直接施せば若い人に浮けると思い…。」
    歩:「着想はいい気がするけど…この見た目じゃあね…。」
    男児:「そうですか…。」(しゅん
    歩:「そうね、モチーフとして取り入れるのは良いんじゃない?護符としてよりも、もっと綺麗さを押し出さないと。」
    歩:「かわいいネイルアートを勉強してさ。」
    男児:「直球過ぎるということですか。かわいく…。」
    歩:「そうそう。」(メモ帳をかりかり
    男児:「分りました、もう少し勉強してみます。」
    歩:「がんばってね。」
    男児:「はい…アドバイスのお礼と言ってはなんですが、これをお受け取りください。」
    歩:「お礼だなんて、気にしなくて良いわ。」
    男児:「そう仰らず、どうかお受け取りください。」
    歩:「そう?…じゃあ遠慮なく。ありがとう。」

[arca] #さしだされた護符を受け取った。

    歩:「うーん、ただ貰うだけもなんだし。指一本分お願いしようかな?」
    男児:「本当ですか?ありがとうございます!…なるべく可愛くしますね。」
    歩:「うふふ、おねがいします。」

[arca] ---

[arca] #男児に左手の小指にネイルアート(?)を施してもらい、帰路につく
    歩:「からふるで、あの子の指にされてたものに比べたらかわいい感じね。」
    歩:「元々器用みたいだし、上手くいくと良いわね。」

[arca] #本日の出会いを手帳に記ながら、そんな事をつぶやく。

[arca] ---

 

解説


 夜の街を怪異を求めて彷徨う歩。僅かな変化を予見し、街の一角へと降り立つ。そこ出会ったのは小さな易者の悩みだった。

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