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狭間06エピソード集

エピソード『白髪の少年』


目次


エピソード『白髪の少年』

登場人物

獅子王
モノノケ商店街の住人。とても腹が減っている。
白狐明
白髪の少年。不意に出してしまった耳からして狐の様だ。

落し物

警官
「えー、落とし物ね。この書類に住所と名前書いていただける?」
獅子王
「あいわかった」

[arca] #獅子王。と達筆で綴る

警官
「…(キラキラネームか)」
獅子王
「これでいいか?」
警官
「はい。じゃあ念のため君の家に電話するけど良いかな?」
獅子王
「む?なぜだ」
警官
「一応保護者の方に報せておかないとね」
獅子王
(顔を少ししかめて)「よく見ろ」

[arca] #トントンと書類をつつく

警官
「ん?……二十歳?」
獅子王
「拙は社会人だ」
警官
「…免許証とかある?」
獅子王
「ない」

[arca] #獅子王の顔をじーっと見る警官

警官
「証明できるものがないなら、やっぱりご自宅に電話をして確認を取らないとならないね」
獅子王
「ぬ…」
警官
(獅子王の返事を待たずしたためた電話番号に電話する
警官
「ーーーはい、そちらのお宅の獅子王という…ええ、落とし物を届けに」

[arca] #警官が事情を話すと、電話口から老人のからからと言う笑い声が聞こえてきた

獅子王
「く…」
警官
「はい、ええ年齢を…え?ああ、そうですか。ええ」

[arca] #驚いた表情で獅子王を一瞥

警官
「ーーーはい、では失礼致します。……いやー、申し訳ない」
獅子王
「疑いは晴れたか?」
警官
「ええ、まあ」
獅子王
「もう言って良いかな?昼飯前なのでな」
警官
「ええ、どうぞ。ご協力ありがとうございました」
獅子王
「…(さっきまでとまるで態度が違うな」

[arca] #少しイラッとしつつ交番を出る

獅子王
「公職と関わると面倒でイカン。もういきとうないな」
白髪の少年
(こそこそ
獅子王
「…こんどはなんだ…」

[arca] #白髪の少年が電柱の影にかくれて獅子王を見ていた
[arca] #獅子王がそちらに目を向けると伝中に顔を隠す。

獅子王
「アレでかくれたつもりか…」

[arca] #華奢な身体がはみ出ている

獅子王
(ストストとわざとらしく足音を立てて少年に近づいていく
白髪の少年
「……、!…」

[arca] #ちょろりと目を覗かせたが、獅子王がすぐ近くに来ていることに驚きまた顔を隠す

獅子王
「小僧なにようだ」
白髪の少年
(ビクっ

[arca] #観念したように僅かに電柱から身を現し、半分も見えていない大きな瞳で獅子王を見上げる

獅子王
「今拙は機嫌が悪いのだ。早うなにか言わぬと噛み付くぞ」
白髪
「ひうっ」(ぴこ

[arca] #獅子王の言葉に怯え、ビクビクと毛を逆立てる少年。すると頭からぴょこんと大きな耳が飛び出した

獅子王
「……なんだ、お前も妖怪か…多いな今日は」(頭を掻く
白髪の少年
「え?…あっ」(慌てて自分の耳を押さえつける
獅子王
「心配しなくて良い、拙も同じようなものだ」(にょきっと牙を出す
白髪の少年
「ひうっ!」(また隠れる
獅子王
「…(苦手な手合いだ」
白髪の少年
「…ふ…」
獅子王
「なんぞ」
白髪の少年
(ビクっ)「さ、さい、ふ…」
獅子王
「財布?」
白髪の少年
「さいふ…ぼ、僕の…」
獅子王
「……まさか、あの財布。お前のか?」
白髪の少年
(頷く

[arca] #腕を組み、オドオドした少年を改めて見る
[arca] #服装は今風。しかし、白髪が目立つ
[arca] #昼間の太陽できらきらと煌めき、眩しい

獅子王
「(さっきの耳の形からして稲荷の類いか)しかし、アレは商店街で少女から受け取ったものだが」
獅子王
「知り合いか?」
白髪の少年
「姫ちゃん…僕の財布でジュース買いにいくって行って……その…」
獅子王
「…」
白髪の少年
「帰ってきたら…財布、獅子オニイチャにあげたって…」
獅子王
「……(なんと言う娘だ」
白髪の少年
「それで、臭いを追いかけて…」
獅子王
「…財布ならそこの交番に届けてしもうたわ」
白髪の少年
「えっ」

[arca] #オドオドが増す

獅子王
「いって返してもらえ。ではな」

[arca] #獅子王はその場を離れようとしたが、ピッと、着物の裾を掴まれる

獅子王
「……」(無視して進む
白髪の少年
(ぐぐぐ……
獅子王
「ちょ…ぬ、脱げる…」(着物がはだけた
白髪の少年
「〜〜っ」
獅子王
「わかった!離せ!なんだ!?」(がばっ

[arca] #少年を振りほどき、着物のえりを直す

白髪の少年
「あ、あの…一緒に」
獅子王
「…なぜ拙もいかんとならぬ」
白髪の少年
「…こわい」
獅子王
「〜〜〜…わかった。小僧名前はなんだ」
白髪の少年
「明(あきら)」
獅子王
「そうか…めんどくさいのう。ついてこい明」
(こくりと頷き、獅子王について行く

[arca] #頭をぼりぼりかきつつ、先程出たばかりの交番へ向かう

財布の持ち主

[arca] #交番で「今度は迷子か?」などと聞かれつつ、イロイロと面倒なことになりつつなんとか財布を返却してもらった

(安心しきった顔で財布を抱いている
獅子王
「よかったな、話の分かる警官で…書類は色々と書かされたが」
「うん…」
獅子王
「じゃあな。拙は昼飯を食わねばならぬ」
「…稲荷寿司?」
獅子王
「ちがう。わからんが違う」
「そっか…」
「じゃあね、獅子お兄ちゃん…」
獅子王
「おう。姫と言ったか…あいつにいじめられるなよ」
「姫ちゃんは良い子だよ?…」
「ばいばい」

[arca] #手を振り、路地へ消えていく

獅子王
「…はぁ。本格的に腹が減った」

時系列

2013年1月

解説

落し物を拾って交番に届ける獅子王。すると財布の持ち主が現れて……
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